
愛すると言う事…
第1章 episode 1
ツカツカと近付いて来たその下級生が、寝そべった俺の傍に座ったと思ったら、ニッコリ笑った。
和「俺、二宮和也。皆、"ニノ"って呼んでる」
一見、極普通の高校生って感じだけど、俺からしてみたらクソ真面目な生徒にしか見えない。
和「大野先輩、だよね?」
智「………」
和「姉ちゃん、同じクラスだけど…知らないか(笑)」
知らない。
ってか、高校入ってからまともにクラスの人間の名前を言える奴なんか居ない。
何だか人懐っこいコイツは、何で俺の傍に居るのかも皆目見当も付かない。
和「"何でコイツここに居んだ?"って思ってる?」
智「………」
和「本当に無口なんだね(笑)?俺の姉ちゃんがさぁ、話した事も無ければ声すら聞いた事無いかも!って言ってたんだよね(笑)」
智「………」
和「知ってる?1年の間で『大野先輩は実は声が出なくて喋れない』なんて噂になってんの」
ベラベラと、良く喋る男だ。
しかも楽しそうに。
それでも俺の頭の中には櫻井翔の事しかなくて。
"生きる理由"ってのがサッパリ分かんないから、いつまでもモヤモヤしたままだった。
何度目かのチャイムを聞いた。
俺はまだ何か喋ってる二宮和也をそのまま放置して屋上を後にした。
背中に『また明日♪』って、声が届いた。
昼過ぎには帰って来てしまった。
リビングでボーッと煙草の煙を燻らせながら、やっぱり"生きる理由"を考えてた。
それと同時にやっぱり櫻井翔の小さな笑みが浮かぶ。
智「熱っ!!」
煙草の火がフィルターまで燃えて、思わず灰皿に投げ捨てた。
時計が6時を過ぎた頃。
言われたコンビニまで、行こうかどうかかなり悩んでた。
だけど、あまりに気になり過ぎて頭がショートしそうだったから、何とかスッキリしたいが為にコンビニに向かう事にした。
やっぱり歩いて向かいコンビニに着いたら、ちょうど7時ぴったりだった。
