
愛すると言う事…
第1章 episode 1
櫻井翔は、既にコンビニの駐車場に居た。
翔「お、若いのに時間に正確だな?」
智「………」
翔「フッ(笑)…とりあえず、乗ってくれ。飯でも行こう」
この間乗ってた車とはまるで違う、真っ白な高級車のドアを開けた。
立ち尽くす俺。
櫻井翔は『ホステスじゃあるまいし(笑)』って笑った。
別にドアを開けてくれなんて言ってねぇよ…と思ったけど、いちいち面倒臭いから黙って助手席に乗り込む。
静かな車内は、あの時香った香水と同じ香りがした。
シフトを握る櫻井翔の左腕にはシンプルなデザインだけど明らかに超高級と分かる腕時計。
それ以外の装飾品は見当たらない。
翔「本当に無口だな(笑)よくそれでホストやってるよ(笑)」
名刺を渡して来たあの日とは、まるで違う雰囲気。
何だコイツ…
どっちが本当の櫻井翔なんだ?
それでも大人の落ち着いた雰囲気を醸し出ているのは確かで。
車を止めた先に見えるのは…居酒屋…?
え?
こんなきっちりスーツ着込んで超高級腕時計してる男が、居酒屋…?
車を降りて歩き出す櫻井翔について行くしかなく…
雅「いらっしゃいませ♪…あ、何だ!翔ちゃんじゃん♪」
翔「おぅ♪…上、貸して」
雅「いいよ♪…ビールでいい?」
翔「あぁ。…後、適当に摘みも」
雅「了解♪」
カウンターの中の男は明るくて元気のいい、ここの店主らしい。
櫻井翔とは顔馴染みなのか、仲の良さは初対面でも分かる。
2階に上がるのも慣れた様子で、俺はただ黙って階段を上がった。
上がった先に、何ヵ所かドアが見える。
一番奥のドアを、躊躇なく開けた目の前の男は本当に慣れたものだ。
狭いながらも畳敷きの部屋に、4人も入ればちょうどいいくらいの空間。
腰を下ろした櫻井翔は、テーブルの向かい側を指して座れと促した。
言われた通りテーブルを挟んで座ると、さっきの店主らしい男がビールを手に部屋に入ってくる。
雅「何か食べられない物、ある?」
そう聞かれ小さく首を振ると、ニコッと笑った。
