ながれぼし
第8章 in the water
相「あれ?でも大野…くんって、俺らより1個上じゃなかった?」
ニ「あ、そう。本当なら3年。
なんか…センセーの話では、前の学校では必要日数通えなかったみたいでさ。
ダブるから、俺らと同じ学年になるみたい。」
「登校拒否ってやつ?」
相「それか、ちょーヤンキー?」
ニ「…んーそれは俺にもわかんない。ま、水泳部に入るかも確定ではないみたいだし。」
「ふぅん。」
大野智。ね。
相「あ!大野くんて、○○県でしょ!
もしかして松潤の運命の人かもよ?!」
ニ「運命の人じゃなくて、命の恩人だろ。」
相「同じようなもんでしょ?ずっと探してるんだから、もう出会えたら運命だよ!ね?松潤!」
大野くんの居た県は、俺が溺れた海がある。
「うぅん。…まぁ正直ちょっと期待はしちゃうよね。そんな宝くじでも当たるような偶然無いってわかっててもさ。」
相「ほらー♪それに大野くん。イケメンだったし。きゃー楽しみー♪」
ニ「なんでお前が一番盛り上がってんだよ。」
と、ニノは呆れた声を出した。
.
そう。
俺はあの日…海で溺れたその日からずっとずっと探している。
パニックになっていた俺に、大丈夫。絶対助けてやるって何度も声をかけ続けてくれた男の子。
たぶん。俺たちと同年代。
覚えてるのは…
真っ黒く焼けた肌。
真剣な横顔。
強く穏やかな声。
そして、あの手。
…あの日から、あの子の顔が、声が、手が、俺の心に焼き付いて離れない。
溺れてから…水に入れなくなってしまった俺。
わかってた頭では。プールと海は違うって…
でも、いざ目の前にすると足がすくんで、呼吸が上手くできなくなって…
それは夢にも見た。
息苦しさに…全身汗びっしょりになって飛び起きる。
それほどまでに…あの 死。という恐怖は俺を苦しめた。
…
…でも
必ずといって…そんな時
『大丈夫。もう大丈夫だから。』
あの声が聴こえてくる。
強くて穏やかな、あの声。
あの男の子の横顔。
そして、強く掴んでいてくれた、優しい手。
それを思い出すと、また眠ることができたし
絶対に戻ってやる。って、そう思えた。
そして
時間は…だいぶかかっちゃったけど
俺はこうして、大好きな水泳に戻ってくることができたんだ。
だから…
会いたい。
会って、この気持ちを伝えたい。