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ながれぼし

第8章 in the water



窓の外は…ジリジリと照らす太陽の光で眩しい。
エアコンの付いてない暑い室内。
ふわり。と広がるクリーム色に焼けたカーテンが風ではためく。

その風だけが、俺に涼しさを与えてくれた。


今は使われてない教室。
そこで聞こえるのは俺とニノの声。それと…

ニ「潤、いくよ。」

「…ぇ!もう?まって…俺まだ…」

ニ「もう遅い。」

そう言ってニノは容赦なく
ボタンを押す。

「っうわー!やめろよ!痛い痛い痛い!」

ニ「……痛くないでしょーよ。」

「痛いよ!…あ…やめろって…!」

ニ「つーか…なんで潤が痛がるのよ。」

「だって…このキャラ可愛そうじゃん!こんな、ごつキャラにボコボコにされてさ!」

教室内に響く軽快な音楽。

ニ「ほら。ほらほら。早くしないとゲームオーバーだよ。」

「ま、まって、まってって!あ、また殴った!痛いって!……あー……もう!また負けた!」

情けない音楽が流れ、俺は、はぁ…と持っていたゲーム機を足の上へ下ろした。

ニ「んふふふふ。相変わらず弱いねぇ潤は。」
そう言って満足そうに笑うニノ。

「ニノのレベルが桁違いなんだよ…」


ご覧の通り
そうこれがニノのストレス発散方法。

ニノの気が済むまで、対戦ゲームでボッコボコにされ続けるのだ。

一回も勝てた試しがない。ニノは元々ゲームは強いけど、ストレスが溜まったニノは鬼強い。もはや神レベル。


ニ「はい。もう一回。」

「…りょーかい…。」
はぁ…と溜め息をまた吐いて、俺はゲーム機を握り直した。





「だあ!…また負けた!もぉこのキャラ可愛そう…。」

もう俺のメンタルもフィジカルもボコボコだ。

ニ「くふふふふ。弱い弱い。
てか潤ってさ、面白い感性してるよね。」

「面白い?」

ニ「うん。だってこれ対戦ゲームよ?痛くするのが可哀想って、なんか面白いよね。
俺にはない感性だなって。」

「……そう?か?ニノが余りにもボコボコにするからだろ?」

ニ「……そうかもね。
…………ごめんね潤。サボらせて…。」


ニノはね、世渡り上手。だけど、心を開いた人に対してはこんなにも我が儘で、自己中になるんだ。

そしてちゃんと謝れる。
可愛いよね。

「ふふ。いいよ。
先輩に、嫌だったって伝えないの?」

ニ「……言えないよ……嫌われたくない…もん…」


あら、ほら可愛い。

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