ながれぼし
第8章 in the water
嫌われたくない。とポツリ。と呟いたニノ。
その耳の縁が徐々に赤くなる。
「櫻井先輩は、そんなことじゃニノのこと嫌ったりしないよ。」
ニ「わかんないじゃん…。……俺のヤキモチ妬きは異常だもん。自分でもわかってる…。」
手に持っているゲーム機。その握る手にぎゅっ。と力が入っているのがわかる。
「……ニノ…」
こう言うとき、なんて言ってあげたら良いかわからない。
俺は、まだ…恋愛をしたことがないから。
小さい時から水泳の毎日。一時期、水泳から離れたといっても、頭の中は水泳だった。
女の子に興味があったか無かったかって言ったら、そりゃあったような気もするけど、俺にとっては水泳の方が断然魅力的だった。
…俺って、どこかおかしいのかな…。
ニ「…やっとさ、付き合えたのに何も前と変わんないの。」
またポツリ。と声を出したニノ。
「え?変わんない?」
ニ「うん。なーんも。呼び方も二宮。俺は櫻井センパイ。部活でほぼ毎日会えるけど、それだけ。一緒に帰ろうなんて言われないし。
…好き。なんて言われたことない。
……あれ?実は俺達付き合ってないのかなー?」
あはは。と自嘲気味に笑う。
「…そんなこと…」
…
…付き合ったことない俺でも、何となくわかる。
それは確かに…不安になるかも。
ニ「あは。なーんてね。付き合えたのは事実だし。俺はあの日をしっかり覚えてるしね。
センパイと…部活できるのも後もう少し。センパイや皆が全力で泳げるように、しっかりマネージャーさせて貰いますよ。」
そう言って俺に向けられた笑顔。
…無理してるのがわかる。
「ニノ。」
ニ「んー?」
「俺は、ニノのこと好きだよ。雅紀もだ。
だから俺達には気を使うなよ。なんでも受け止めてやるから。」
俺が言えるのはこれくらい。
ニ「……何、気持ち悪いこと言ってんのよ。」
「本当だよ。」
ニ「っ~…もぉ!わかってるよ!照れてんの!察してよ!潤はストレート過ぎなの!
センパイにちょっと分けてあげてよ!」
気が付けば、また耳の縁を赤くしてたニノ。
…あ、照れ隠しか。
ニ「はぁ…てか暑っ。
ほら。もう授業終わるから帰るよ。」
ゲームの電源を落としたニノが立ち上がる。
その顔は少し元気になった。ような気がする。
「うん。」
俺も、その後に続いて立ち上がった。