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ながれぼし

第8章 in the water



「夕飯は?」

リビングに招き入れながら声を掛ける。
俺の両親は共働きで帰りは遅い。今でこそ慣れたが、小中の頃は寂しい事も多かった。
でも、そのお陰でこうやって好きなことさせて貰えてるんだから感謝しないとって最近は思えるようになった。

大「あ、店長にオニギリ買って貰って食べてきた。」

「………あそ。」

実は実はの昨日のアイスも店長の奢りだったらしい。なんか勝負で勝ったとかなんとか…。バイト中に何してんだって話だ。

「俺の部屋、狭いからここでいい?」
俺はダイニングテーブルに座るよう促した。

大「うん。俺はどこでも。」

俺の家はアパート。有り難いことに自分の部屋はあるけど…ま、言っちゃなんだが狭い。

でもだからって2人くらい余裕で入るよ?
…じゃぁなんでかっつーとだ。


予防のためだ。


大「こう…でいいのかな…?」
そう言って目の前に表れたのは…綺麗な瞳。

「っ!」

…いやね?大野くんとはさ、まだちゃんと出会って……まぁちゃんとっつーのも変だけど、こうして出会ってからはまだ日が浅い。
でもさ、わかったことがある。

大野くんてさ、パーソナルスペース馬鹿なんじゃねーの?

距離が近いんだよ!

只でさえ、只でさえさ、パニック起こさないようにって、これ以上ドキドキが激しくならないようにって、勉強に意識を持っていこうと必死に気を反らそうとしてんのに…

4人掛けのダイニングテーブル
普通対面座りするだろうに、大野くんが座ったのは俺の真横。

少しだけ見上げる瞳と目が合い…
そして…ちょっと体が動くと触れそうな…ふわふわの黒く綺麗な髪…


大「松本くん?」

更には少しだけ首を傾げるというコジャレた事をしてきた。


はぁ………




昨日

大『勉強を教えて欲しい。』
そう言った大野くんは、その後、俺に話をしてくれた。

ニノが前に言ってた"親の都合"

あんな話を聞いたら、尚更大野くんの力になりたいのに…


ドクン。


跳ねた心臓。
それを合図に始まるドキドキと打つ体。


俺の気持ちは…心はそれを許してはくれなくて
この苦しさは、一緒に居る…過ごす時間が解決してくれるのだろうか

自分事なのにわからない。

まるで得体の知れない何かに体が乗っ取られそうで…
どうすれば…どうすれば俺は大野くんの側に居ることができる?


ねぇ……

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