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ながれぼし

第8章 in the water



***


ニ「発作は起こしてないんでしょ?」

と、ニノは俺より少しだけ低い位置にある瞳で伺ってきた。


あれから何度も自分で考えた。けどこの霧がかかったような…自分が自分じゃ無いようなモノが何なのか…わからない。
このままじゃ水泳にも影響が出そうで…怖くなった俺は『誰か』と助けを求めたのは、ニノだった。

と言うか…ニノにしかできない。




ジリジリ。と首の後ろに突き刺さっていた陽射しは流石に影を潜める時間。
にしても今年の夏はやけに暑い。

「スマホ忘れた!」と部室に取りに戻った雅紀を校門で待つ事になった俺達。


ニ「潤?」

この学校の…俺達水泳部の主な活動の場は屋外だ。かなり紫外線を浴びる機会は多い。そしてそのマネージャーだって同じ様な行動をしているのに、何故だかニノだけは肌が白かった。

「うん。」
俺はそんなニノに視線を合わせて頷いた。


ニノが言う"発作"って言うのは、フラッシュバックのこと。
つまり俺の場合は溺れた時を思い出し、息苦しさと動悸から過呼吸を引き起こしパニック状態になることだ。

「俺…さ……大野くんの近くにいたいんだ。勉強でもなんでも、俺ができることなら…大野くんが望んでくれるなら、何でもしてやりたいって思うんだ。
…でも…近くに居るとやっぱり胸が苦しくて…発作が起こらないようにって、ずっと気ぃ張ってるって言うか…」

ニ「…うん。」

「…あ、でもさ!いい加減慣れたんかな?つーか気を紛らわすのが上手くなった?(笑)だから発作起こす直前見たいのは、コンビニで会った時以来ないし。
…このままいけばもしかしたら克服できちゃうかもな?はは。」

なんて希望も込めて笑ってみてはみたものの。

ニ「……」
ニノは俺から視線を外し、考えるように少しだけ唇を尖らせた。






先週、夏休み前の試験期間が終わった。

あ、結果は、
俺とニノと雅紀は、1つも落とすことなく試験をクリア。特に雅紀は、自己新記録の学年順位を叩き出していた。


大野くんは、2科目が追試。
あの短期間の勉強で、ぎりぎりの科目もあったとは言え、クリアした方のが多いってのは素直に凄いと思う。


と、同時に各部活の活動が再開。

つまり、大野くんが俺の家に来ることも もうなくなって…ただ追試をクリアするために、休み時間を使っての勉強会は続いていた。


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