
ながれぼし
第8章 in the water
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相「ニノ。嬉しそうだったね。」
「だなー。」
櫻井先輩を見るニノは…いや、見詰めるって言うのが正しいのか、ニノは本当に幸せそうだった。
相「初めてだよね。ニノと櫻井先輩が一緒に帰るって。」
「うん。これが災い転じて福と成すってやつなのかな。」
相「ね!
顔色もすっかり良くなってよかった!」
そんな事を話ながら、俺達はニノと先輩がいる保健室を後にする。
相「じゃーまたねー。」
校舎を出たところで、雅紀に手を振られ
「え?大野くんは?
一緒に帰んないの?」
今ここに大野くんが居ないのは、
大勢でニノの所へ行っても気を使わせちゃうから。と、大野くんの配慮だ。
相「だ・か・ら。だよ!
俺、ソッコー家帰って、ソッコーで観たいテレビあるから、じゃね♪」
「はぁ?大野くん呼んでくるから一緒に帰ろうよ。」
部室まで走っていけば直ぐ。
わざわざ別々で帰る必要もないじゃん。
そんな風に思って雅紀を止めれば
「もぉ…」と、ぶぅ。と口を突き出し呆れた目で俺を見た。
「な、なんだよ?」
相「松潤って…、ほーんと大概鈍いよね。」
…
それ、どっかで言われたような…
「鈍いって何にだよ。」
相「……う〜ん。これは、おおちゃんがやきもきするわけだ。」
「え?大野くん?……て、わっ」
急に雅紀に両肩を掴まれた俺は
クルッと強制的に方向転換され
相「とりあえず…早くおおちゃんとこ行ってこーーーーい!!」
「おわわっ!」
そして、ドーーーーンっと背中を押され
相「走る!」
「え?な…?!」
相「走る!!」
「わ かったよ…。」
…
なんなんだよもう…
雅紀の笑っているけど真剣な声に
足を動かせば
相「松潤!おおちゃんに、ニノは大丈夫だって伝えてね!
あ、あと今日はお疲れ様って、おおちゃんによろしく伝えてね!
それと、明日は一緒に帰ろうって〜……」
…
いやに長い言伝ても
もう聞こえなくなりそうな距離
でも
相「俺ね!松潤にできることってきっと今だと思うんだ!
だから、頑張ってね!おおちゃん待ってるよ!」
…
……え?
俺に出来ること?
今?
振り向けば
もう既に小さくなった雅紀の背中が見えた。
