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ながれぼし

第8章 in the water




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雅紀に背中を押され
たどり着いた水泳部の部室

「大野くん……っあれ?」

いない。
部室にはいない。


そう。大野くんの姿はそこには何処にもなくて


となると…


なんとなく、なんとなくだったけど
何かに引かれるように足が向かったのは


チャプン…


…あ


チャプン





なんとなく、ここかなと思ったプール施設。



さっきまで俺達が練習していた名残はもうすっかり跡形もなくて
でも、そんな中ゆらゆらと揺れる水面。


「……」
と、その一部が大きく揺らめいて


大「…ぷはっ!…ふぅ…」


パシャン…と小さな水音を立てて、そこから大野くんが顔を出した。


「……ぁ」


……トクン…


跳ねた心臓。


トクン トクン トクン


その動きが早さを増していく。


んだよ…もう慣れたと思ってたのに


ドキ ドキ ドキ ドキ


益々騒ぎ出す心臓。



…オレンジ色の夕日色に染まる水が…
その中で、前髪をかきあげた大野くんの
手が、指が、濡れる髪が…そして大野くん自身を夕焼け色にキラキラと輝かせる姿が


あまりにも綺麗で

目が離せない。



大「あ、松本くん!」


「っ…」


気がつかれて、濡れた瞳と視線が合えば、更にドギマギしてしまうこの心臓。


大「ニノ。大丈夫だった?」


「…ぁ……ニノ……あ、あぁ!ニノね!
大丈夫!うん!大丈夫!櫻井先輩が送ってくれるし!顔色も良くなったし!」


大「ふふ、そう。それなら良かった。」


「う、うん。良かったよ!」

なんか、笑われちゃったけど。


「大野くんは…自主練習?」


大「ううん、久々で…なんか嬉しくて。
勝手に入っちゃったから岡田先生に怒られちゃうかなぁ?」

そんな風に言うけど、しっかりと舌を出して
ちっとも悪いことだなんて思ってない様子で笑った。


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