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ながれぼし

第8章 in the water




コポ…コポコポ……


それは、不規則な円になって頭上へとあがっていく


…ぁ…こっちが上か


間近の大野くんの顔をぼんやりと見つめながら
そんな事を考えた。

トクントクンと体を揺らす鼓動は心地よくて


何故だろう。もう、さっきの怖さがない。


と、す…。と唇からあたたかさが消え
けど、あたたかな手は俺の頬っぺたに触れたままで


少しだけ離れた大野くんが、ゆっくりと目を開けて、綺麗な瞳を覗かせる。

開いた瞼は、一度眩しそうに細められ





俺は、間抜けな顔でもしてたのか、
可笑しそうに口元を緩めた大野くん。


その口が少しだけ開いて

『見て』と、俺に言ったような気がした。


なにを?と言った俺の口から
コポ。と漏れた空気。

上へ上へと上がるそれを目で追いかければ


『……ぁ…』




……もしかして…大野くんが見せたかったのって……


視界を広めた先にあったのは


キラキラ

キラキラと


淡いブルーと、夕焼け色の赤、
穏やかなイエローに、そして優しいグリーン

様々な色が、揺めき、煌めき
そして消えては、また現れ……




……あぁ…なんて

…なんて"この世界"は…


きっと、ここが水の中でなかったら
涙が流れていたかもしれない。



…もうずっと忘れてた

でも……思いだした

そう…


この世界は


こんなにも"美しい世界"なんだ。



少し顔を下げれば
自然と合わさった視線。


まるで『ね?綺麗でしょ?』とでも
言ってるかのように、無邪気な笑顔を作った貴方。



うん、綺麗だね。


ねぇ…大野くん。


俺ね……



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