
ながれぼし
第3章 冬以上春未満
櫻「何か用ですか?」
丁寧な柔らかな口調。
一言でも見える人柄。
確か…有名な大学だっけ。頭も良いんか。
当たり前だけど、隣に並んで立つ2人
…『翔ちゃん』は智と並んでも引けを取らない。
悔しいけど…お似合いだ。
…
……でも
ここまで見せつけられても、智を諦めようという気持ちになれない。
なんでだろう…
あんなに見たくないと思っていた“恋人”
しかし俺はいまだに発狂する様子もない。
…潤くん
俺、潤くんの言うようにストーカーなのかも。しかもガッチガチの鋼のメンタルを装備したやつだ。
「俺は…」
相「かず、行こう。」
きっとこの時、相葉くんが遮ってくれなければ、この2人の前に挑戦状でも叩き付けていたと思う。
「え…?ちょっ…」
と声を出した時には相葉くんに腕を引かれ、よろけそうになりながら足を出す。
それに反応したのは
櫻「かず」
え?
名前を呼ばれて振り返る。
櫻「かずなり?」
なに?なんで??
そう言った『翔ちゃん』は、俺の何をもってyesととったのか
櫻「へぇ、君が…ね。」
そう言って意味ありげに笑った。
っ…!
その瞬間、カッと体が熱くなる。
知ってるんだこの人、俺が智にアプローチしていること
不思議ではない、寧ろ当たり前だ。
「しつこい奴がいて困ってる。」と智が『翔ちゃん』に相談していてもおかしくない。
「あ…」
そう理解した途端、さっきまで装備していた鋼のメンタルは意図も簡単にヒビが入り砕け散った。
つん。となる目の奥。
相「かず行くよ。」
さっきより強く握られた腕に今度は逆らうことなく従う。
相「もう少し頑張って」
そう聞こえた小さな優しい相葉くんの声。
…お陰で、2人の前で無様に泣かずにすんだよ。
「…っ、…がとう…」
相「…俺にまで気、遣わないで。」
…お前は良い奴だな。俺の友達だなんて勿体ないくらいだ。
結局、潤くんと何があったか聞き損ねたけど、きっと潤くんが悪いんだ。潤くんのバーカ。
なんて勝手に八つ当たりな、ごちゃごちゃな事を考えながら
前を歩く相葉くんの背中だけを見てひたすら歩いた。
