
ながれぼし
第3章 冬以上春未満
あのあと
ズルズルと潤くんに連れてかれてしまった相葉くん
その瞳には涙が浮かんでて
あ、潤くんが怖くてじゃないよ?きっと嬉しくてね
「ふふ。」
良かったね相葉くん
本当に良かったね
ここ最近で一番嬉しいや
「んふふ。」
漏れる声も気にせず、ニヤけた顔で見下ろした中庭
…あ
智はもういなくて…
「はぁ…」
俺に春は来そうにないや…
そう、心の中で呟いた
**
「お疲れ様でしたー。お先でーす。」
バイトを終えて裏口から出る
勉強も勿論大切だけど、お金も大事
仕送りは有り難い事に貰ってるけど、やっぱそれだけじゃね
夕飯どうしよ。作るか、買い弁か…
てか…腹空いてない
いやいや、食欲無いって俺どんだけだよ
今までだって…何百回も智に振られてきてんじゃん
そうそう。そうだよ。また頑張ればいいじゃん
…
……
…迷惑。だったかな
俺が話しかけてくるの、嫌だったのかな…
恋人に会ったのは…もう諦めろってことなのかな
…
自然とトボトボ。になる歩調
「…はぁぁ」
と、幸せが逃げるのもお構いなしに、夜空を見上げながら盛大に溜め息を吐き出した
見上げた夜空には、キラキラと光る星
何?慰めてくれてんの?
なんてね
あれ?
視線を下ろすと視界に入った何か
……あ
理解が遅れたのは…それが理解し難い光景だったから
あれは…
『翔ちゃん』
あの無駄なイケメンは
『翔ちゃん』
間違いない
恋敵。間違える筈はない
でも…隣で親しそうに手を繋いでいるのは
女の人
「…なんで?」
思わず心の声が外へ出た
と、ふつふつ。と鍋の中の水が沸騰するかのように感情が沸き立つ
ふつふつ
ふつふつ
なんで?
だってお前…智の、恋人だろ?
なんで、他の人と手繋いでんの?
仲良さげに笑い合う様子は、紛れもないカップルで、これまた悔しいくらいお似合いだ
ごぼごぼ
ごぼごぼ
なんだろうこの感情…
いつの間にかに握り締めていた手が、震える
家路を進んでいた俺の足は『翔ちゃん』を追う
人混みさえも楽しむように、ゆっくりと歩く2人には直ぐに追い付いた
そして、やたらと撫で肩な肩を掴み
ぐいっ。と『翔ちゃん』を振り向かせると同時に
俺は、怒りで震えた拳を振り上げた
