
ながれぼし
第6章 きみごころ
俺ね初めはね。大野っちって、見た目こそ綺麗だけど、それを鼻にかけて人を下に見るツンツンした奴。そんな印象だった。
でも、櫻ちゃんと一緒にいる大野っちは全然違くて、話せば良く話すし俺の話聞いてくれるし、良く柔らかく穏やかに笑った。
そして、ほわん。としてるのに自分という軸をちゃんと持っている、芯がしっかりしている奴だった。
大「…〜。」
先輩「〜〜……!」
大「〜…。」
先輩「…!」
壁から離れれば微かにしか聴こえない声。
まだ続いてるみたい。飲め飲まない論争。
大野っちも大野っちだけど、先輩も粘るねぇ。
櫻『決行は、智くんの誕生日前だ。』
大野っちの本質をわかってこそ…か。
それでも、もしもの時の為にこうして櫻ちゃんが近くにいて、良かったね…大野っち。
「ふぅ…」
一通り笑って落ち着いた俺。
櫻ちゃんと笑い転げている最中に届いたウーロン茶。
店員に、え?なに?こいつらやべー…。な冷やかな目で見られたけど、気にしない。
ごく。と渇いた喉をウーロン茶で潤をした。
で
今は壁に背中を預けている櫻ちゃん。
櫻「………智くんて…」
「ん?」
櫻「…かっけーなぁ…」
ポツ…と。
…
かっこいい?
見ればその顔は、手元を見るように下を向く、そこに当たる古い電球の灯りが顔の凹凸を鮮明にする。
まただ…
「櫻ちゃんて良くその顔するよね。」
櫻「…ぇ」
「寂し気なさ。」
櫻「……」
「似合わないよ。」
なんでこんなことを言ってしまったのか
櫻「、」
くりっとしたアーモンドのような瞳が俺としっかり交差した。
あ…やべっ!っと我に返る。
「っ今のなし!なしなし!なんでもな…」
櫻「タケ。」
「っ…」
櫻「サンキュ。」
櫻ちゃんは笑った。
いつもの爽やかな笑顔じゃなくて
凄く…嬉しそうに
…
……
…大野っちにしても
櫻ちゃんにしても
なんで…俺にそんな顔すんだよ
やめろよ
また勘違いすんだろ……
櫻「俺さ……ぁ?」
「?」
櫻「…聞こえない。」
え?
そう言われて耳を澄ます
…
「ほんとだ…」
櫻「っ!」
ガラっ!
櫻ちゃんが慌てて、通路への扉を開け
…そして肩を揺らした
「…あ」
俺も続いて覗けば、隣の部屋の扉は開いてて
部屋の中には誰も居なかった。
