
ながれぼし
第6章 きみごころ
カラン
ひとつ。
カラン…
またひとつ。
止まっていた手を動かし、グラスに氷を入れれば
カラン……
冷たい氷が音をたてて落ちていく。
その音に合わせるかのように
俺の気持ちも下へ下へ堕ちていくみたいだ。
…
……
『お前に友達なんてできるわけねーじゃん。』
『ギャハハハっ!』
もう…あんな思いはしたくない
ごめんだ。
そう思って決めたじゃん
友達なんていらない。
馬鹿高だったけど、マジで必死に勉強して地元から遠ーいこの大学受けて
俺のこと誰も知らないとこで
新しい自分になろうって。
願いは叶った。
…
のに…
なんで?なんでこんな苦しい?
1人ぼっちじゃない。色んな人に話しかけて、大学の何処へ行っても知ってる人は沢山いて
寂しくなんてない。
…
……筈なのに…
なんで……っ…
大「タケちゃん。」
「っ!」
いつの間にか、強く閉じていた瞼。
掛けられた声に、驚いてパチっと目が開く
大「タケちゃん。」
ライトの一瞬の眩しさに目を細めれば
横から俺を覗き込み、また名前を呼ぶ大野っちが見えた。
「…ぁあぁ!大野っちもジュース取りに来たの?
俺は何飲もうかなぁ。」
急に声掛けるからビックリしちゃったじゃん。と笑って誤魔化す。
大「タケちゃ…」
「あ、それ櫻ちゃんのグラス?」
かなり無理矢理なのはわかってる。
けど…何も聞かれたくなくて、大野っちが両手に持ってた右のグラスを指差した。
大「……うん…」
「じゃぁコーラか。」
持っていたトングで氷をぽいぽい入れる。
大「え?なんでわかるの?」
「なんでって、櫻ちゃんお茶かコーラしか飲まないじゃん。で、大野っちは?メロンソーダ?」
大「すごい!エスパーみたい!」
…大袈裟だ。
これだけ一緒にいたらわかるわ。と思いながら、大野っちの顔からは、さっきまで俺を見ていた表情は消えたことに…ホッとした。
「あ、そうだ。」と
櫻ちゃんのコーラに、牛乳を混ぜて持っていったら
櫻「飲み物で遊ぶな阿保!」
って怒られて、期待通り!と大野っちと笑えた。
で、残すのはルール違反。
櫻ちゃんのだよ。と理不尽に飲ませたコーラ牛乳。
なんで俺が?とかぶつぶつ文句言ってたけど
「やべ…案外いけるな。」って飲み干した。
