
ながれぼし
第6章 きみごころ
ごく。と喉を通ったのは、冷えたビール。
俺は飲むよ。だって好きだもん。
両親譲りの酒の強さ。酔っぱらうことは無くても酔いはするし、何よりこの、飲み独特の騒がしい雰囲気が好きだった。
「この間、野村達とドライブ旅行行ってさぁ。観てよこの動画。」
「へぇ…海?楽しそうじゃん。」
それに、この中に入れば胸の苦しさが落ち着く。
「マジ、野村が馬鹿でさぁ〜」
「へぇ………」
そんな気がするんだ…
そんな会話中、チラッと視界に入った大野っち。
先輩方がいるテーブル席で一回り小さくなり、その手にはビールジョッキ。
ちび。と飲んでは、むぐむぐと口を小さく動かし
また促されては、ちび。と飲む。
きっとその口は『苦い』『不味い』って声にならない声で言っているのだろう。
そりゃそうだ。
CMみたいに、ビール旨そう!なイメージだったら 初めて飲む時は少なからず驚くよね。
そんな大野っちの隣。
あの先輩は、ちゃっかりとしっかりと肩がくっつく距離……
大野っちもさぁ
嫌なら嫌ってはっきり言えば良いのに。
…って言えないよね。こんなアウェーな所でホームの人達に囲まれちゃってたらさ。
「なぁあの先輩ってさ。噂ってマジでホントなの?」
会話が途切れたところで聞いてみる。
「え?…あー…3年の?……それが実はさ…」
ワアっ!!
?!
一段と騒がしく沸いた室内。
何?と
盛り上がった方を見れば
「イッキ!イッキ!イッキ!」
「はい!おーのくんいっちゃって〜!!♪」
…
あー…
始まった
最早恒例と言っても良い
飲み会サークルのお決まりの、イッキコール。
大「え…?いっき?…俺が飲むの?」
「主役が飲まなくて誰が飲むんだよ。ほらほら、誕生日おめでとー!♪」
大野っちの、ちびちび飲みに業を煮やしたのだろう。殆ど量の変わってないジョッキの中のビールが揺れる。
「「イッキ!イッキ!イッキ!イッキ!」」
他のところで騒いでいた人達も
わらわらと集まりイッキコールが鳴り響く。
ここまで盛り上がっちゃったら……
流石に止められない…
どうする…と視線を向ければ
櫻ちゃんと目が合った。
でも…そんなことしてるうちに
大「…、」
大野っちは、意を決したように
両手で持ったジョッキを自分の口へと傾けた。
