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ながれぼし

第6章 きみごころ




ごく…ごく…


喉仏を上下させ、ジョッキの角度を上げていく。


けど…

大「っぷはっ…!にがぁ〜…もぉ無理…」


丁度半分くらいには減ったジョッキを、どん。とテーブルに置いた大野っち。


その顔は
ぎゅぅ。と両目を閉じ
にがい。とベロを出している。


し…ん…、



……

なにそれ

ちょーかわいいじゃん。




「っ大野くん!もぉ一回いこう!半分も残ってんじゃん!」

「あ、ビール駄目ならハイボールいく?」

「ほらほら。イッキ!イッキ!イッキ!」


ワァ!ワァ!と
更に盛り上がりヒートアップしていく周り。


……こんな所で可愛さ振り撒いてどぉすんだよ!
大野っち馬鹿なの?自覚無いにも程があるよ…



次々に大野っちの前に置かれていく、ビールにそしてハイボールなどなど。

結局、ビールは底が見えるまで飲まされ
次はこれ。と手渡されたのは色味の強いハイボール。


大野っちは、こく…と、そのハイボールにも口を付けた。




……

そんな大野っちをただ、ただ見続ける
櫻ちゃん。


『俺が飲んで満足するなら、飲むよ。』

そう。俺達に言ってきたのは大野っち。


大「うへ…何これ、全然美味しくない…」

「あははははっ!」

その宣言通り、促されるままに酒を飲む。
そしてそんな大野っちを、上機嫌で囃し立てる輩。



櫻「……」

櫻ちゃんを見れば、いつもは厚く赤い唇は、ぎゅっと閉められ血の気がなく、こめかみには青筋が立っている。
最早女子の話なんてとうに聞いちゃいない。



櫻ちゃんは…必死に気持ちを押さえてるんだ。



「あーあ、大野くん。かわいそー。」

隣から聞こえた、冷めた言葉に冷めた声。
さも《いつもの事》の様に。



は?可哀想だ?
だったら止めろよ。お前のサークルの奴等だろーが。

こんな楽しくも、旨くもない酒の飲ませ方。
俺は大っっ嫌いだ。

潰れるだけじゃなくて、下手したら人が死ぬようなこんな行為。

ふざけんなっ!



大「げふっ…」

苦しそうに飲み続ける大野っち。


気が付けば…膝に置いた拳が震えてた。


『でも…もし潰れちゃったら、その時はお願いしていい?』


その時の、大野っちの微笑んだ顔が
ずっと消えなかった。

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