
ながれぼし
第6章 きみごころ
「イッキ!イッキ!イッキ!」
飽きもせずに、何度も始まるコール。
大「ぅ〜…くるし……」
「おぉ〜!!いいねぇ!大野くん飲めんじゃん!んじゃー次はこれ!」
グラスを空にしても
またすぐに渡される中身の入ったグラス。
大野っちの言葉なんて聞いちゃいない。
「はい!飲んで!飲んで!」
大「…く゛……」
喉を通らなかった液体は、細く白い首を伝う。
…
なぁ櫻ちゃん
大野っち、何杯飲んだ?
もう良くない?
もう連れて帰ろうよ
俺、こんな大野っち見てらんない
やだよ…辛そうな大野っち見んの
.
『自分で蒔いた種』だからと。
これ以上、櫻ちゃんと俺に迷惑掛けるのは嫌だと。これは、大野っちが言ってきたことだった。
1度。酒を一緒に飲めばもう誘わない。
そんなの本当に信じてんの?そんなの大野っちを誘うための、飲ませるための、ただの口実じゃん。
潰れちゃったら…。と笑って言われたけれど、その瞳は、そうなるまでは手出ししないでって強い意思。
『智くんは、俺達まで目を付けられんじゃないかって気にしてんだろうけど…』
と、大野っちと別れたファミレスの帰り道、櫻ちゃんがそんなことを言っていた。
「あはは!大野くん顔赤いよ!酔ってきたんじゃない?」
大「う゛〜……気持ち悪ぃ…」
…
……
んだよそれ…
なんだよそれ。ここまで巻き込んどいて今更なんだよ
めちゃくちゃ矛盾してんじゃん
そんなこと気にすんなら最初っから、櫻ちゃんの提案なんて断って1人で行けよ
どこに気ぃ遣ってんだよ
いらねーよそんな気遣い。よけーなお世話だ
「あ。気持ち悪くなっちゃった?トイレで吐いてこようか?俺が吐かせてあげるよ。」
大「…え?…吐く?」
「うん。吐けばスッキリするよ♪」
1人の男が、大野っちの頬に触れニヤニヤ笑った。
っブチッ…!
あ…
何かが切れた音
櫻「っ馴れ馴れしく…触ってんじゃ…!!」
「はい!!はいはいはーーーい!!次!俺飲っみまーす!!」
俺は、遮るようにテーブルをバンっ!!と叩いて
ビールジョッキ片手に立ち上がった。
櫻「っ」
その他「…え?」
不思議なもので
櫻ちゃんのガチ切れた顔を見た瞬間
この2人を 守りたい
何故だかそんなことを思ったんだ。
