
ながれぼし
第6章 きみごころ
ドアに手をかけたところで
一瞬。また「勝負だ!」なんて言われたらどうしようなんて思ったけど
開ければ…いや開ける前からわかるドンチャン騒ぎ。
…
……すげーテンション
『酒好きの馬鹿ばっか。』
納得だな。
それでも、できるだけ気配を消して
壁際に重ねてあった目的のモノを掴んだ。
そして、やっぱりなんか気になる"あの先輩"
男女の声と、人やモノがぶつかり合う騒がしい室内。
そこを見回したけれど…やっぱり何処にも見当たらなかった。
この数分でいろんな事があって
殆ど酔いは覚めちゃって
俺って酒強いんだな。と改めて思いつつ
ズンズン。と脚を進めていく。
そして聞こえてきたのは
「いつから?いつから付き合ってんの?」
「きっかけは?元々男がすきなの?」
「どっちから告ったの?」
そんな声。
歩くスピードはギリギリまで緩めず、俺は取ってきたモノを ずいっ。と顔の前に突き出した。
櫻「っ!」
「櫻ちゃん。行くよ。」
櫻「ぇ…タケ……あ……これ俺の…」
俺の手から受け取ったのはジャケット。
別に置いてっても後で渡せばいいやって思ってたけど、外寒いんじゃね。
それにもう、こうなったら堂々と帰ればいい。
櫻「ぁ…りがと…?」
相当質問攻めにでもあったのだろう。
その顔は1分前よりも、老け込んで見える。
「え?!健。行くって…」
「大野っち限界。櫻ちゃん頼り無いから俺も一緒に送る。
金。もしアシが出た分あったら言って。」
「ぇ…あ……おう…。」
なんも言わせない。
言ったところで今の俺は聞くきもない。
「大野っちー。起きてー?立てる?」
気持ち良さそうに寝てるのに悪いけど。と
男のくせにやたらと華奢な肩をゆさゆさ揺すった。
大「…ん…ぅん〜…」
少しだけ開いた瞳。
「帰えろう。ちょい腕借りるよ。」
どうせ待っててもいつ起きるかわからない。
でも、だからってやたらめったら雑に扱うことはしたくはない。
とか一応考えながらも、俺は大野っちの腕を自分の肩にかけて半ば強引に立たせた。
「櫻ちゃん。何やってんだよ。帰るって言ってんだろ。」
櫻「ぁ…あぁ…」
これでも精一杯抑えたつもりだった。
でも、けれど強くなってしまった口調
俺は
自分でもわかるくらいに
イラついていた。
