
ながれぼし
第6章 きみごころ
このイラつきは……
何に?
知んないよ。
誰に?
知んない。
どうして?
知んねーって。
本当は、わかってるんだろ?
っだから
「知んないってば!!」
櫻「っうお!びっく したぁ。
……大丈夫か…?」
「ぁ…」
気付けば、さっきまでは後ろを歩いていたはずの櫻ちゃんの顔が目の前。
…
……イラ、…
「…ごめん独り言。大丈夫……つーか熱ぃな。」
合ってしまった目を、不自然にならない様にと空いている手で汗を拭きながら、下へと下げた。
拭ききれなかった汗が
ポタ…と顎から垂れて、アスファルトへと落ちる。
確かに外は寒かったけど
ふらふらと、足元が覚束無い大人1人抱えて歩くのは、思った以上に大変で
女の子みたいに華奢だと思ってたのに、大野っちも男なんだなって失礼極まりない事を思った。
まぁ…女の子にこんなことしたことないから比べ様もないけれど。
櫻「なに怒ってるんだよ?」
「、……は、はは。なにそれ。」
櫻ちゃんが、さっきから目の前に立ちはだかるから、前に進みたくても進めない。
櫻「なんかイラついてるから。」
…やめろ
「イラついてなんかねーよ。」
櫻「いや、イラついてるだろ。」
やめろよ
「しつこいな。イラついてないって。」
櫻「じゃぁなんでこっち見ねーんだよ。見て言えよ。」
「っはぁ?見るよっ。見ればいーんだろ!」
その言い方になんだか、カチン。ときた。
そんなこと言うならお望み通り見てやるよ!と半ばムキになって俺は、顔を上げた…
でも…
「っ…!」
顔を上げて直ぐに後悔する。
櫻「タケ。何か言いたい事があるなら言えよ。」
そこにあったのは、見たこともないような
寂しげな…顔。
櫻「言ってくんなきゃわかんねーよ。」
もう…やめてよ
「……だから…何でも ないって…」
喉から辛うじて出てきたのはそんな弱っちぃ声。
櫻「……」
益々…その顔は歪んでいく
…これ以上は、お願いだよ…
また、下がっていく視線。
櫻「タケ。」
「っ…」
白状しろよ。とばかりに、しっかりと耳に入ってくる俺を呼ぶ声。
…
……
そういえば…初めて会った時から、櫻ちゃんは俺のことをタケって呼んでくれてたっけ……
こんな時に、そんな事を思い出した。
