
ながれぼし
第6章 きみごころ
「……」
櫻「……」
「…………………………………」
櫻「…………………………………」
もしかしたら
このまま黙ってれば「もういいよ。」「言いたくないなら仕方ない。」とか言ってくれるかも…なんてそんな事をまだ願ったりもしたけれど
俺の視界に入っている櫻ちゃんのジーンズと革靴も、つむじの先にあるだろうその口も、一向に動く気配はなくて
…
……
どうしよう…
さっきまで、ふつふつ込み上がっては抑え、また沸き上がっては抑え込んでいたイラつきは、今やその成を潜めようとまでしている始末。
こんなことなら、いっそさっきのイラつきに任せて、ぶちまけた方がまだ言えたかもしれない…
今更、この状況でどう言えっつーんだよ
俺が…こんなこと思ってるなんて知ったらきっと……
大「…んぅ"、」
?
横から聞こえた小さくくぐもった声に、そこにある顔を反射的に覗く
「、大野っち?」
櫻「? どうした?」
「櫻ちゃん。大野っち、ちょっと顔色悪い。それに汗も…」
額にはうっすらだが脂汗をかき、少し苦しそうに呼吸を繰り返す。
櫻「…本当だ……あ、そこ。公園あるから、ベンチに横にさせよう。」
俺と同じく顔を覗き込んで、そして ぱっ。辺りを見回した。
「そだね。りょーかい。」
櫻「待って、歩くよりも…。」
「え?」
櫻ちゃんは、大野っちの腕を俺の肩から外し「よっ。」とその体を持ち上げ、軽々とお姫様抱っこした。
…
……ぉ、お…
やっぱり……櫻ちゃんが彼氏だ。
「あー…俺、水買ってくるわ。」
少し先に見えていた煌々と光るコンビニ。
それ目掛けて歩き出した俺に
櫻「…タケ。」
ちょっとだけ遠慮がちに呼ばれて
「あ?なに?」
櫻「ぁ……いや…」
「?」
…
……あー
「ちゃんと戻ってくるよ。
こんな状態の大野っち置いてけねーよ。」
櫻「、あぁ はは。おう、待ってる。」
櫻ちゃんは、ホっと、したように笑ってさ
大野っちをまた よっ。て抱き直して「智くん 大丈夫か?」とか声を掛けつつ公園の方へと歩き出した。
そんな2人の後ろ姿は
男同士なのにやっぱり画になってて
お似合いじゃん。
って思った。
