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ながれぼし

第6章 きみごころ




ピッ…ピッ……


「623円になります。」


よくよく考えたら…いや、普通に考えたらさ
大野っちが気持ち悪くなっちゃったのは俺が無理に歩かせたからで…

せっかく落ち着いて寝れるくらいになってたのに
…俺のせいだ……


「400円のお返しです。」


そんなことに、やっと気が付いた俺は
さっきまでの大野っちや櫻ちゃんへの自分勝手な言葉や行動、その全てが恥ずかしく…心底自分というものが嫌になった。


「ありがとうございましたー。」




……

…行きたくない…戻りたくない
やっぱり俺の思ってることなんて言えっこない…



…そうだよ。そうだった
この飲み会の時にしたって、なに2人を守りたいだとか思ってたんだろう。俺なんか居ても居なくても…てか寧ろ居ることで迷惑かけてんじゃん…

ちょっと一緒に居てくれたからって、嬉しいこと言われたからって…それで調子に乗って……なんて…なんて図々しいんだ俺…


『言いたいことあるなら言えよ。』


いつからこんなに欲張りになった…?
俺には…自分の気持ちを言う資格なんて、有りもしないのにね……




カサ…。


…あ…

右手に握り込んだ重みのあるコンビニの袋。


浮かぶのは、辛そうな大野っちの顔。それに…さっきの櫻ちゃんの表情。


でも…
……これだけはしっかり届けよう。

帰るのは、それからだ。



.

街灯の数が多く、夜でも明るい公園。
ランニングをしている人や、散歩しているカップル、ヤイヤイと楽しそうな若者の姿も見えた。

街中のざわつきも聞こえる入り口からすぐの
2つ目のベンチ。


大野っちは、ベンチの手摺に寄りかかって、こてん。と首を垂らしている。



「横にならなくて大丈夫なの?」

聞いたのは、その隣に座っていた櫻ちゃん。


櫻「あ、うん。なんかこの姿勢の方がいいみたい。」
顔色も良くなったしな。と櫻ちゃんは、大野っちを見ながら安心したように微笑んだ。




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