
ながれぼし
第6章 きみごころ
と、思ったら
その顔は俺にも向けられて
櫻「座れよ。」
少しだけ腰を浮かしてから櫻ちゃんがまた座ったのは、大野っちとは反対の手摺のそばで
ポカ。と空いた大野っちと櫻ちゃんの間
…
…え
この間に座れと?
「…えと、水買ってきたけど大野っち飲めそうかな?てか寝ちゃった?でもアルコール薄めるためにも無理してでも飲ませた方がいいよな。
それと、ウコンの入ったドリンクも買ってきた。飲んだ後でも効くし、体にも良いからねウコン。それと…それにもし吐いちゃった時にって…」
立ったままガサガサと漁るのはコンビニの袋。
櫻「タケ。」
「ウエットティッシュと、あと袋も…」
櫻「ターケ。」
「…」
櫻「取り敢えず座れよ。」
お前の座る場所はここだからな。とばかりにベンチの空いた空間をポンポン叩く。
「あ…はい。」
つい返事をしちゃった俺。
だって…
顔は微笑んでても
…櫻ちゃんの目がマジなんだもん。
「……お邪魔します…」
座ったら最後。
それプラス
何故カップルの間に座らなきゃならんのか。
そんな思いをはせながら、おずおずと座ったベンチ。
さっきまで櫻ちゃんが座ってたそこは、少しだけ温かい。
櫻「…、」
なんか横から笑われた気がしたけど、気にしない。
様にした。
大「すぅ…すぅ……」
櫻ちゃんが居ない方を向けば
やっぱり寝ちゃったんだ大野っち。
…良かった寝れて。
小さく上下する体には、櫻ちゃんがさっきまで着ていたジャケットがかけられている。
「…」
櫻「…」
…
……
座れ。と言われ、そして座ってから何分経っただろう。
何待ち?
大野っちが起きるの待ち
…違うよな
俺 待ち。
俺を待ってくれてるんだ。と思う。
…
…どうしよう
どうやって誤魔化そう…イラついてのは事実。
そのイラつきがバレてたのもまた事実。
でも…その理由は言えない。
言っちゃ駄目だ。
…
……
でも…でも、これだけは
ちゃんと言わないと
そう、意を決して俺は息を吸い込み
「ごめん…」
櫻「ありがとな。」
意を決した割には、余りにも小さかった声。
その声は、櫻ちゃんのものにすっぽり呑み込まれていった。
