テキストサイズ

ながれぼし

第6章 きみごころ




さわさわ。

さわさわ。


頭上に枝を伸ばす木々が風で揺れ

ひんやりとした空気が流れていく



…大野っち、寒くないかな…
上着、着てこないんだから
今日は寒くなるって天気予報で言ってたじゃん。
見てねーの?

櫻ちゃんも、かっこ付けてジャケット貸しちゃうんだから。明日風邪引いても知らねー…




ボタボタ。と頬っぺたに、膝の上のコンビニの袋に落ち続ける涙

まるで栓が抜けたように、それは溢れてきて



ざわざわ。

ざわざわ。


葉や枝が擦れる音が…膜が張った様な鼓膜に反響して一層強くなる。



……

あぁ…なにしてんだ俺
もう泣かないって決めたのに…
超ダセェじゃん

…俺 気持ちわる…



「っ…」


ふわり。

と、背中に触れた何か。

それが、ゆっくり…ゆっくりと
上下に動く


櫻「大丈夫か?」
そして、少し焦ったような…でも優しい声。


その背中にあるのが、櫻ちゃんの"手"だということに気がつくのに、少しだけ時間がかかった。





……あぁ

もー駄目だ…


「さ、くらちゃん…」


櫻「ん?」


「おれ…俺さ……」


櫻「うん。」


「イラついた…すっげーイラついた。」


櫻「…うん。」


「そんで、大野っち歩かせて…せっかく気持ち悪いの治まって寝てたのに、無理やり歩かせて…気持ち悪くさせて……だからごめんっ…」


櫻「…」


「俺、大野っちの為だとか…櫻ちゃんの為だとか……2人を守りたいって思っちゃって…そんなこと思っちゃいけなかったのに…2人には笑ってて欲しくて、でも結局俺のやった事は足引っ張っただけで……」


櫻「……」


「櫻ちゃんと大野っちが…付き合ってるってさっき知って、なんで教えてくれなかったんだよって…言ってくれてもいいじゃんってムカついた。それでイラついて、櫻ちゃんに当たって、大野っち店から引っ張り出して…ごめんなさい…。」


たぶん。いやきっと涙と鼻水で顔は酷いだろうし
止まらない涙のせいで、声は震えるし、つっかえるし
挙げ句の果てには、言ってることも、時系列もぐちゃぐちゃで、途中から何言ってるのかわからなくなって

でも、謝らなくちゃって…



2人に嫌われたくない
嫌わないでって…

そう思っ…



っバッチーーーンっっ!!!



……ん?
何かが弾けた…?


ストーリーメニュー

TOPTOPへ