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ながれぼし

第6章 きみごころ




「へ?」

なにごとかと
物凄く近くで聞こえた何かが弾けた音

赤い実はじけちゃった。どころじゃないレベルだ。


びっくりして、顔を少し上げれば
そこにあったのは…

「、」

櫻ちゃんの手…


…じわ…

「っ痛!」

…じわじわじわ…

「え?!いたい!痛い痛い痛たたたっ!はぁ?!ちょっと!ちょー痛いんだけどっ?!!なに?!いてててててっ!!」


弾けた音と時間差でじわじわ襲ってきたのは
強烈なおでこの痛み


びっくりして止まった涙が
また違う意味で出てきた

「なっにすんだよっ!親父にもデコピンされたことないのに!痛ぇーじゃんかっ!!」

俺はおでこを両手で押さえつつ、絶対に事の犯人であろう櫻ちゃんへと噛み付いた。

櫻「煩せぇなぁ 痛くしたんだよ。
けど痛くねぇ!」


「っはぁ?!なに言ってんの?!」


櫻「タケ。もう一発やらせろ。ほら。デコ出せデコ。隠すな。ほら、ほらほらほらっ。」


そしてまた引き金を引く寸前の形になった手を俺のおでこにセットしようとする。

「もう一発って?!!やだよ!今、めっちゃ痛いんだって!次やったら頭割れる割れる割れるからっ!」

櫻ちゃんの手を、両手でがっちりホールドしてみたものの…

櫻「はっ!ジム通いナメんな。」
それに屈せずぐいぐい。


そうだったー
このにわかボンボンヤローがっ!

「やめろって!マジで馬鹿なんじゃねーの!」


櫻「馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ。つーかやめねーよ。ほら諦めろ諦めろ。」


「餓鬼かっ!」


グギギギギ…

と俺の頭の上で行ったり来たりする
俺の手と櫻ちゃんの手

それに合わせて ギャァギャァ。と騒ぐ俺達…てか俺。


気が付けば2人ともベンチから立ち上がってて、人目なんて一切気にする暇もなく
そのデコピン攻防戦は暫く続いた…。



.




「ハァハァ…ちょ…もぉマジ勘弁して…ハァ…
わかったよ…俺が悪かった…降参、白旗、すいませんした…」

何分間そんな事をやっていたのか
持久戦には耐えられない俺は息まで上がっちゃう始末で、意味わかんないけど取り敢えず負けを認めた


櫻「わかってない。」


「…え?」


櫻「タケは、全然わかってない。」

なに?と、こめかみから流れてきた汗を拭いつつ顔を上げれば


口角を歪ませ
怒った顔の櫻ちゃんと目が合った。

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