
ながれぼし
第6章 きみごころ
ガタンっ!
また聞こえた物がぶつかる音
大「っ…」
先輩「確かにさ。大野くんは綺麗だよね…でもさぁ…ちょっとひどくない?」
大「先輩… 痛い…」
会話を聞くだけの為に少し開けたドア
そこから中を覗いてはみたものの
その狭い視界には2人の姿はない
…
中…どうなってんの?
大野っち、痛いって…大丈夫なの…?
先輩「ねぇ大野くん?」
大「……、…」
口調さえ穏やかではあるけれど
あれから先輩の声のトーンは低いまま
…
……キレ た?
キレちゃったんじゃないの?先輩
大野っちのまさかの「タイプじゃない」発言に
先輩「これ、見てよ。」
大「ちょっ…なに…ぁ…」
…
何されてんのっ!?
どうしよう…これはもしかしなくても大野っちのピンチじゃ…
今すぐにでも飛び込んで行った方がいい系?
でもっ……俺が入っていって何が…
…
あ!
はっ。として
ばばばっ!と周囲を見渡してみたけれど
櫻ちゃんの姿はなくて…
『さ〜くらちゃ〜〜〜ん!!』
正義の味方でも呼び出すように
心の中で叫んではみたものの
そんな都合の良いヒロイン能力なんて当たり前だけど俺には備わってないわけで……
どうしよう………どうしたら……
先輩「これ見ても、さっきと同じ事言える?」
大「っ…や!ゃめっ…」
っ!!
「っちょっと!待っったぁぁ!!」
スッパッーーンっ!!
先輩「!!」
大「!」
勢い任せに開け放ったドア
大野っちから一瞬上がった嫌がる声
それを聞いたら居てもたってもいられなくて
俺は脊髄反射的にドアへと手をかけてしまっていた
そして今
「あ…!」
目の前の光景
倒れている椅子の側で
壁に向かって攻め寄る先輩と
壁と先輩に挟まれて、その眉毛を下げ、その瞳を潤ませている大野っち
大「っタケちゃん…」
先輩「……」
先輩の手は大野っちの頬っぺたに触れ
もう片方の手は………
「こっちこい!」
怯んでしまったら何もできなくなりそうで、勢いのままズカズカと2人の元へ行き
その腕を引いて、先輩の手から引き離した大野っちを
俺は、自分の胸へと閉じこめた
