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and you

第2章 not yet  S×O





O side



「ちょっと散らかってるかもしれないけど。」
「お邪魔しまーす。」


大野さん家初めてだって、キョロキョロしてる
ニノと一緒にリビングへ向かう。


「あんまり人を上げないからなぁ。」


リビングのドアを開けて、ニノに
適当に座ってと声を掛けると、ソファーではなく
下のラグに腰を下ろしてる。


「軽くご飯作るわ。」
「おー、ありがとうございます。」


あの日の翔くんと同じ位置。
キッチンに立つ俺を見る目線の角度。

忘れたいのに、簡単にあの日がよみがえる。

軽く頭を振って気持ちを入れ替えると、
目の前の料理に没頭した。




「簡単なのしか出来ないけど…。」
「わっ、こんなに作ったんだ。ありがとう。
 俺も手伝えばよかったね。」
「ゲームしてたのに、手伝う気なかっただろ。」


バレた?なんて言って笑うニノにつられて
俺も笑ってしまった。




「「かんぱーい。」」


ニノと飲むのなんて、いつぶりだろうか。
コンサートの打ち上げなんかでは
飲むけど、二人で飲むのはかなり久しぶりで。 

談笑しながら飲んでいると、
知らぬ間にピッチが上がっていたらしく


「ちょ、大野さん。ペース速くない?」
「んー…。」


だって、こうでもしないと酔えないんだ。

ニノと二人で飲んで、楽しい時間を
過ごせば過ごすほど、あの日の記憶が
よみがえってくる。


翔くんの笑い方はもう少し豪快だった。

翔くんはグラスに注いでビールを飲んでた。

翔くんは俺の作った料理を
口一杯に頬張って食べてた。

全部をあの日の翔くんと比べてしまう。


「大野さん。」


ニノの声にハッとした。

ニノの手が、ゆっくりと頬に伸びて
何かを拭ってる。

そこでやっと自分が泣いていることに
気が付いた。

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