and you
第2章 not yet S×O
O side
「大野さん。」
俺を呼ぶニノの声は驚くほど優しい。
「誰にだって忘れたいことはあるよ。
でもね。
大野さんが忘れようとしてることって、
本当に忘れてもいいことなの?」
真剣な瞳が俺をじっと見つめる。
忘れようとしてた。
でも、本当は忘れたくなかった。
忘れたくなかったから、あの日の記憶を
なくさないように、大事に心の奥底に
しまっておいた。
「今日、ずっと俺の後ろに
誰かを重ねて見てたでしょ?」
ニノに言われてドキリとした。
「俺じゃない誰かを求めてるなら、
動かなきゃ。
今からでも遅くないと思うよ。」
優しく微笑むニノを見て、
涙が止まらなくなった。
何で俺は立ち止まったままだったんだ。
翔くんが覚えてないことを理由にして、
傷つきたくなくて動かなかった。
翔くんが俺のことを好きだからって、
自惚れて自分から動こうとしなかった。
俺だって、翔くんが好きなんだ。
「ごめん、ニノ。」
「謝んないでよ。」
笑うニノは相変わらず優しい。
「でも、俺、ニノに甘えてひどいことー…」
「あー。付き合ってっていったやつ?
忘れて忘れて。」
「でもー…」
「俺、相葉さんと付きあってんだよね。
大野さんに告白した、なんて知られたら
浮気になっちゃうから。」
「……、えええ!?」
俺の叫び声と共に、部屋に
インターフォンが鳴り響いた。
「ほら。…来たんじゃない?やっと。」
「来たって…。」
モニターを覗くと、そこには
俺が一番会いたかった人が立っていた。