and you
第2章 not yet S×O
O side
頭の理解が追い付く前に、気がついたら
エントランスの扉を開くボタンを押していた。
そんな俺の様子を見て、
クスッとニノは笑って
「大野さんも会いたかったんじゃん。
ちゃんと向き合って、素直になりなよ。」
なんて言う。
「それ、ニノがいう?」
「俺だって素直になるときは素直ですー。」
唇を尖らせてわざとらしく拗ねている
ニノを見て笑うと、少し気持ちが楽になった。
ニノのさりげない優しさにまた救われた。
ーピンポーン…
玄関まで翔くんが上がってきた合図が響く。
「俺は帰ろうかな。」
荷物を手早くまとめて、スタスタと
玄関へ向かうニノを慌てて追いかける。
ひとつ、大きな深呼吸をしてドアを開けると
ずっと会いたかった、俺の大好きな人。
「お邪魔虫は退散しまーす。
どっちも素直になりなよ。」
風のようにニノが去っていって、
残った俺たちの間に静かな時間が流れる。
「智くん」「翔くん」
「「あっ。」」
声を出したタイミングが重なる。
それが何だか妙に嬉しくて思わず
笑みが溢れると、翔くんも同じような顔を
していて。
ふたりして優しく微笑みあって、
柔らかい雰囲気が俺たちの間に流れてる。
心地よいこの空気感があの日と重なって、
またあの甘い記憶に押し潰されそうになった時
「この前のこと、全部思い出した。」
一番待ち望んでいた言葉が、
この世で一番大好きな声にのって聞こえてきた。
心臓がドクンと大きく脈打った。