ヴァンパイアに鎖の愛を
第1章 終わりの始まり
「…あれ…ヴァンパイア?」
レイラが意識を失って数分後---
そこに近付く黒髪の端正な顔立ちをした男はぼーっとしながら今日の獲物は大きいなあと能天気な事を思っていた。
もちろんそれは動物でも何でもないレイラなのだが。
「ソウ!遅いよ、なにしてんの?」
「俺とシンの方はまーた収穫ゼロだぜ」
ソウと呼ばれた男の後ろから近づいてくる2人の男達もそれはもう綺麗な顔立ちをしていた。
しかしソウが見ているエモノに目を向けると2人は顔を歪めた。
「あァ!?なんだこれ!?人間か!?」
「い…やいや、この髪色にこの白さどう見てもヴァンパイアでしょ」
1番のヴァンパイア特有の紅色の瞳は今は閉じられていて見れないがその浮世離れした容姿はどう見ても人間とは言い難い。
「ヴァンパイアなら…すぐ殺した方がいいんだよな?」
「だね。幸い他の仲間もいないし、抵抗する気力もない。今のうちに殺しておかないと後々面倒なことになるよ」
この害のなさそうな少女をすぐさま殺すのは気が引けたが致し方ない。意識が戻って殺されるのは自分たちだと思い、後から来た2人がレイラに近づいたところでソウがあろうことかレイラをお姫様抱っこした。
「は?ちょっと、ソウ、なにしてんの?早く殺さないと起きちゃうんだけど」
「…この子害ない、と思う。地面の血痕の乾き方からして足怪我してから暫く経ってると思うけどまだこんなに傷の治りが遅い。」
「だからなんだよ!弱くてもヴァンパイアだぞ!?」
「そうだよ。弱いからって見逃さないで今すぐここで殺すべきだと思う」
非道な2人に比べて慈悲のあるソウ。しかしそう見えて実は…
「…だから、弱いならいつでも殺せる。」
「「…」」
まるでおもちゃを壊すかのように軽く言うソウに一瞬2人は息を呑んだが、まあこれも一興かとこれ以上は何も言わずソウに従うことにした。