テキストサイズ

テントの中でなんとやら

第1章 濡れた記念日

 でも、なにか気になった。

 まだ、あるのかしら?

 あるような、気がする。

「実は……まだ、あるんだ」

 あった。いったい、いくつ用意してるのかしら?

「ハイヒールは履かないかい?」

「ハイヒール?」

 そういったものは、履いたことがないし、触ったこともない。

「ああ、君のサイズを考えて、ちょっと大人びた姿を想像して買ったんだ」

 こうちゃんはそれを目の前に差し出した。

 オレンジ色をした、ツヤのあるハイヒールだ。

 こんなの履いたことがない。

 厚底シューズも試したことないのに……。

「そして……これが高かったんだ」と、こうちゃんが私に近づいてきた。

「え……こうちゃん……」

 こうちゃんの顔が近くに……呼吸をこんな間近で……私は激しい胸の高鳴りを感じた。

 こうちゃんは私の首に手を回し、なにかをかけている。

 え、まだあるの?

「鳥羽に行って見付けてきたんだ。このネックレス」

「ネックレス!?」

 鳥羽って、伊勢の横の鳥羽? 鳥羽と言えば……真珠!

「えっ!? 真珠なの?」

「ああ……君の思い出に残るプレゼントに出来るなら、安いものさ」

 だんだん、不安になってきた。こうちゃんと付き合いはじめてから、まだ一ヶ月だよ。

 大丈夫なの?



 いろんな意味で……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ