テキストサイズ

テントの中でなんとやら

第1章 濡れた記念日

 外はかなりの雨だ。

 閉め切ったテントの中に二人。湿度がどんどん上がって、体がジトジトしてくる。

「雨、すごいね。私、帰れるかなぁ……」

「傘は持ってないの?」

「こんなに降るとは思ってなくて、持ってきてないの」

「じゃ、やむまでここにいなよ。少し小降りになったら、おくっていくよ」

「ありがとう。でも、傘ないよ」と言うと、こうちゃんは「これ、持っていきな」と、1本の傘を差し出した。

 緑色した、細い傘だ。

「こうちゃんのは?」

「俺はレインコートがある。大丈夫だ。でも、残念だなぁ。ここから見る夜空は格別なんだ。シャガールみたいな青い夜を見せたかったんだけどなぁ」

 ごめん、こうちゃん。私、シャガールがわからない。

 とにかく、晴れた日に、ここから見る夜空はとても綺麗ってことね。

 でも、なんか引っ掛かることがある。





 なんだろう……体験したことないデジャヴを感じてる気がする。

 この先、約束された展開があるような……。


「あ、そうだ、今度、休みの日に映画いかない?」とこうちゃんが言った。

「映画? うん、いきたい!」

「チケット買ったんだ」

 こうちゃんはチケットを、出してくれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ