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高校生だってムラムラする。

第2章 キス


「今日はここまでかな」

 私は大きく伸びをした。そろそろ下校時刻が近付いてきている。
 支度をしていると、手の甲が黒崎の節ばった手に軽く触れる。彼の手はそのまま重なり、指を絡めてくる。

「黒崎?」

 手を繋ぐのは初めてではなかったし、なにより二人きりのこの状況に正直期待もしていた。
 すぐに腕を引かれ、抱き締められる。彼が着ているワイシャツから柔軟剤のふっくらとした香りがした。

「……ごめん」

 腰と背中に回った腕に力が入るのが分かった。抱き締め返すと、黒崎の頭が私の首元に埋められた。吐息があたって、ぞわぞわと鳥肌が立つ。思わず声が漏れそうになるのをぎりぎりのところで抑え込んだ。

「だい、じょうぶ」

 ああ、まずい。この感覚は――
 ひくりとそこが疼き出してしまう。人には言えないその場所が。こんなにいやらしい私を、目の前の彼が知ったら何と言うだろうか。軽蔑される? それとも……。
 そのうちに、黒崎は顔を上げた。彼は切なそうに凛々しい眉を八の字に軽く寄せ、目をぐっと細める。

「成瀬……」

 熱にうなされたような、ぼんやりとした声だった。私たちはゆっくり顔を近付けると、そっと唇同士を触れさせた。
 その瞬間、私は体に電気が走ったと錯覚した。しかし、当然ながら、それは電気ではなかった。疼きを増すそこが、電気は性的快感であることを示している。もっと欲しい。でも、これ以上は止まらなくなってしまう。
 そんな葛藤を知るよしもなく、黒崎は再びキスを落とす。今度は三秒ほど。次は五秒、その次は二回続けて。キスは、どんどん激しく深くなっていく。

「ん……」

 やがて、どちらからだろうか、濡れた粘膜同士が触れ合ったとき、私はとうとう鼻にかかった声を出してしまった。
 驚いたように彼の動きが止まる。しかしそれも束の間、すぐに唇を食まれ、熱い舌がちろちろと口の隙間を擽った。我慢出来ずに舌で撫ぜれば、向こうもまた舌先で応じる。気付いたときには、舌の動きはまるで貪り合っているかと思えるほどに大きくなっていた。



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