あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
岳人side
大阪と東京を往復する日々を過ごしていた。
親父は何だかんだいって、カミヤグループのホテルを転々としてるらしく、
自社のレストランで食事をして、さらにクラブやホストにまで出没して、
早く言えば、遊んで暮らしているようだった。
さりげなく俺の動向も探りつつ、だ。
食えない親父を気にしつつ、業務に追われていた。
……会いたい。
そう思ったから、大阪に足が向き、ここのホテルの仕事に集中していた。
その矢先に、不意討ちみたいに、やっと咲良に出会えたのに。
ますます痩せて見えた。
相変わらずの、スレンダーなプロポーション、儚げな色気にぞくりとした瞬間、
スローモーションのように、目の前で咲良が崩れ落ちた。
どさりと横たわる細い体、手に持っていた資料が散らばり、焦った俺はすぐに咲良の体を抱き上げた。
……軽い。
こいつはこんなにも、軽かったか……!?
チン、という音がして、咲良が用事があったのであろう、披露宴などに良く使われる階にエレベーターが止まる。
「……えっ!?店長っ?どうしちゃったんですか!?」
エレベーターの外にいた、咲良の会社の人間らしき、女性二人が悲鳴を上げた。
俺はかなり、動揺していた。
目の前で最愛の女が倒れたんだから、当たり前だ。
「……目の前で倒れたんだ、顔色が悪い、すぐに知り合いの医者を呼ぶから、805号室に連れて行く!」
「……えっ!?805号って、スウィートルーム……!?百合ルームですか!?明日、新郎新婦が泊まる!?」
「……ああ、悪い、今晩まで俺が泊まりに使わせて貰っていた、取り敢えず咲良を運ぶから、何かあれば訪ねに来てくれ」
自分の名刺を渡して、もう一人の女性が散らばった資料を片付けている。
「……って、神谷社長ですか!?……咲良って、店長とはいったい……?」
「……こいつとは昔からの付き合いだ、後のことはよろしく頼むよ?」
エレベーターの資料を片付けて、女性社員が二人して、色めきたち、まずかったかなと思いながら、
扉が閉まる。
俺は咲良の細い体をしっかり抱きしめて、最上階に向かった。