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あたしの好きな人

第7章 セフレの固執




岳人side


ここのホテルのスウィートルームの、ロケーションは悪くない。

天井から床まで一面に外の光が入り、解放的な窓の外には、視界を遮るものがなく、

大阪の市街地の風景を楽しめる。

遠く六甲山まで眺めることが出来、エジプト綿や京都絹の優雅な手触りが、

極上のデザインを引き出させる。

ほんの少し泊まる部屋がたまたま、今夜だけ空いてたから良かったものの、

咲良と一緒に……下心は過っていた。


ベッドの上に咲良を横たわせ、親父の知り合いである医者を呼んで看て貰う。


……睡眠不足と過労気味だと診断され、簡易的な点滴をして貰ってすぐに帰って貰う。

……過労とかあり得ないだろ……。

咲良の傍に座り、頭を抱え込んだ。



昔から集中すると、自分のことは後回しにする癖があった。

例えば大学の課題やレポート、飲まず食わずで完璧なものを仕上げて、その後に熱を出したり、

仕事に没頭するあまり、気付けば休日出勤、残業続き、家に帰って死んだように眠りこける。

そんな咲良がほっとけなくて、アパートに入り浸り、食事の世話まで焼くようになったのに。

……やっぱり俺がいないとダメなのか?

青白い顔色の頬にそっと手を乗せ、唇を重ねる。

頭を撫でていると、ドアをノックする音が響いた。


咲良の会社の人間かもしれない。

そう思ってドアを開けると、見覚えのある奴が、思い詰めたような表情で立っていた。

会社の後輩、咲良が哲と呼んでた奴だ。


見た目は美形、人懐こそうな外見に、スラリとしたスタイル、

鋭い視線であからさまに、俺を睨んだ。



「……はじめまして、日野 哲です。咲良とは一緒に暮らしています。……連れて帰るんで迎えに来ました」

俺は日野を顎でベッドを差して、招き入れた。

「……こんな状態の咲良を、お前が家に連れて帰る?……こんなになるまで、気付かなかった奴がか!?」

寝てる咲良の腕を捲り、点滴の痕を見せた。

「……っ」

日野の顔色がサッと暗く影った。

「医者を呼んだら、寝不足と過労だとよ?……昔から無理したら食事もろくに食わなかったけど、寝不足にはそんなにならなかったなあ?」

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