あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
咲良は睡眠だけはきっちり取るタイプで、電池が切れたらどこででも寝るとこがある。
付き合いが長いから、そんな事も分かってしまう。
……こいつは寝てる咲良にも手を出す、ろくでもない奴だ。
何でそんな奴といまだに、一緒にいるのか。
殴りたい気持ちを必死に抑える。
「……俺が、無理させたから……っ」
項垂れて、泣きそうな顔をして、寝てる咲良に触れようと、
日野が手を伸ばした。
「……帰れ」
パシッ
その手を振り払い、咲良の前に立ち塞がる。
「……今日はこいつをここで休ませてあげたい、心配しなくても、具合の悪い女をどうこうしねぇよ、いいからお前はもう帰れ」
睨みながら言うと、日野は何か言おうと口を開き、諦めたようにまた項垂れた。
「……分かりました、咲良をよろしくお願いします」
「お前によろしくお願いされなくても、俺は大事にしてるんだよ!」
思わず我慢ならなくなり、声を荒げてしまう。
「……大事なら傍に居ればいい、遠くで思ってるだけじゃ、俺は諦められない、弱いとこにつけこんででも傍に居続けます」
「……へぇ、じゃあ俺は、ここから咲良を返さねぇよ、お前みたいな奴が付け入る隙も、もう与えねぇから」
「……っ!」
俺がそう宣言すると、日野はぎゅっと唇を噛みしめて、咲良を見つめた。
「……やっぱり連れて帰ります!」
「ふざけんなよ、いいからお前は帰れ!」
今にも咲良を抱えそうになる日野を止めるように、咲良の前に立ち塞がる。
ぎゃあぎゃあ言い合いしてる中で、寝てる咲良の儚げな顔が、
苦痛に歪み、長い睫毛が震えた。
「……うるさいっ!」
がばりと身を起こす咲良が、急に起き上がったせいか、頭を抱え込んだ。
「……咲良!」
「咲良……!」
俺と日野は同時に叫んだ。