あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
「……んだとオラぁ?お前と一緒にすんなよ?俺は大人だから、お前みてぇな鬼畜じゃねぇんだよ?」
「俺は鬼畜なんかじゃ……っ!」
「いいから帰れ!」
「……痛いだろ、離せっ、……咲良っ!また明日、迎えに来るから……っ!」
哲をズルズル引きずり、無理矢理ドアの外に出す岳人、
そのドアの隙間から、なんとかこっちを向いて、哲が手を振った。
「ごめんね、哲……っ」
バタンッ!
激しいドアの音がして、岳人がホッと一息ついた。
「……とんだガキだな?」
呆れたような顔をして、ゆっくりベッドへと近付いた。
「……まだ、横になっていろよ?腹は減ってねぇか?ああ、お粥とかアッサリしたもんがいいのか?……持って来させようか?」
やけに流暢に話す岳人が、あたしの額にスッと手を置いた。
「……やっぱり熱が出てんじゃねぇか!ちゃんと寝ろよお前っ!」
有無を言わさない勢いで、ベッドにゆっくり押し倒された。
それから奥に引っ込んで、物音を立てて、慌ただしく、また顔を出す。
「……ちょっと買い出しに行って来る、すぐ戻るから、ちゃんと寝てろよ?」
「う、うん」
バタバタ足音を立てて、岳人が出て行く。
一人ぽつんと残されて、ケータイを手元に引き寄せて、哲のメールに気付いた。
『多分、俺のせいで無理をさせてしまったから、ごめんね、咲良。
仕事は明日は休んでも大丈夫だよ。
あの人に言われて気付いたんだ、俺は自分の気持ちを押し付けてばかりで、咲良のこと考えてなかったかもしれない。
だから、ゆっくり休んで、あの人と一緒なのは、正直気に入らないけど、ごめんね、咲良』
メールを読み返して、そのまま目を閉じた。
何だかひどく疲れていて、頭の中が纏まらない。
そのまま夢を見る……。