あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
夢の中でお母さんが泣いていた。
台所のテーブルの上で、お酒を一人で飲みながら、うつ伏せになって肩を震わせている。
おばあちゃんと一緒に寝てたけど、トイレに行きたくなり、目を覚ました。
幼い頃の夢……。
『……会いたくても、会えないなんて……、生きていれば会えると分かっているのに……、あの子にも会わせれないなんて……』
お母さんに何か話かけたくても出来なくて、おばあちゃんが来てあたしに気付いて、
ため息をついて、お母さんの傍に行く。
『神谷グループだか何だか知らないがね?あんな大きな会社の社長で、奥さんまでいちゃあ、諦めるしかないよ、あんたはそんなの分かって、あの子を産んだんだ、祝福される訳もないよ、今さら子供の存在を知らせるくらいなら、最初から言っておけば良かったんだよ?』
『……そんなのどうでもいいのよ、あたしはただ、会いたいだけなの』
『まあ、子供の前でそんなこと言わないの、……咲良、いいからおばあちゃんと一緒に寝よう?』
おばあちゃんは呆れたようなため息をついて、あたしの手を引いて、一緒にベッドルームに行く。
二人の会話の意味は分からないけど、不安な思いを抱えて、おばあちゃんに抱き付いて、眠りについた。
子供の頃の夢……。
今のは……なに?
目を覚まして、布団から身を起こす。
神谷グループ、
奥さんがいて……?
お母さんが会いたいのに、会えないって泣いていた……?
……どういうこと!?