あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
岳人side
ホテルを出て、薬局へ向かった。
親父の友人である、医者の話を思い出した。
『やぁ、岳人、えらく美人さんだな?このこはお前の彼女かい?……ん?どこかで見た美人さんだな?名前は何と言うんだ?』
親父の友人の秀樹さんは、親父とは幼馴染みで、幼い頃からの顔なじみだ。
大きな病院の理事長を勤めている。
『青井 咲良だ。……俺の大事な…ってそんな話はいいから、早く看てくれよ?』
『……青井?……って、まさかな?』
笑いながらも真面目に咲良の状態を看て、体のあちこちに触れるオッサンに注意する。
『……寝不足と、過労だなこりゃ、女にあんまり負担をかけるんじゃないよ、俺の勘だが、このこ妊娠してるかもよ?親父に言えば喜ぶなぁ?』
ニヤニヤ笑うオッサンを見て、俺はかなり複雑な顔をしてたらしい。
『悪いな、お前も色々大変だなぁ?あいつも若い頃散々な目に合ってな?結局、親の決めた許嫁と結婚してお前が産まれたんだがな?まさかその嫁もお前を産んですぐに死んでしまうなんてなぁ?』
何故だか慰めるように、背中を叩かれた。
『うるせえよ、今ではすっかり遊び人だ、秀樹さんも親父に会ったら、ちゃんと真面目に働くように言ってくれよ?』
『はいはい、会えばな?』
妖しい含み笑いをする秀樹さんと、昔話で盛り上がって別れた。
一応、もしも妊娠してても負担にならない、軽い薬を渡された。
どうやら胃薬らしいが……。
だけど、咲良が妊娠……!?
俺の子であって欲しい、俺との子供なら、
間違いなくこれから先も、ずっと一緒にいられる理由が出来るのに。
だが、あいつ、日野の子供なら……!?
もう、一緒にはなれない……!?
そこまで考えて首を振る。
そうじゃない、誰の子供であろうと関係ない。
大事なのは咲良が本当に、妊娠したのかどうかなんだ。
そして、妊娠したとしても、俺の気持ちは変わらない、
変わらないんだ。