あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
岳人にはこれまで付き合った人の相談も、全てしてたから、
抵抗なく話せてしまう。
不安なことも。
怖かったことも。
お互いに食べ終えて、ため息をつきながら、手早く洗いモノを済ませた岳人が、
不意に椅子に座るあたしに近付いて、腕を掴まれた。
「岳人……?」
あたしの手を掴んで、ひっくり返してじっと見つめる。
同じようにあたしも見て、手首に掴んだような跡があるのに、気付いた。
薄いけど、赤い痣だ。
岳人の切れ長の黒い瞳が、剣呑な光に変わった。
腕をそっと離されて、ほっと息をついた瞬間に、Tシャツを捲し上げられて、軽く悲鳴を上げる。
「さっきも脱いでた癖に、大袈裟に反応するなよ?」
じっと顔を近付けて、調べるように体を見られた。
シャワー浴びてる時は何とも思わなかったけど、うっすらとした、赤い花びらのような痣が、
ところどころ、散りばめられていて、ぞくりとしてしまう。
「……そいつ、ちょっと普通じゃないな、お前……そのうち変な男に捕まって、刺されでもするんじゃないかと思っていたけど……やめとけ」
「う、うん……」
「どうせ、いつもみたいに、好きかどうかもわかんねぇだろ?そんなのもう、止めてしまえ」
「うん……」
岳人に言われて、さすがに反省する、今回は確かに少し、恐いって思った。
Tシャツをもとにもどして、衣服を優しく整えられた。
じっと真っ直ぐに見つめられる。
「そんでいい加減もう、俺にしてしまえ、そろそろ気付けよ、ば~か!」
「……て、えっ?……えぇっ!?」
「さすがにもう限界、マジでお前危な過ぎ、ないわ~、もうふらふらさせねぇし、全力で口説くから」
「……えっ?だって今までそんなの一度も……っ、だってあんた、普通に家に泊まったり、一緒に寝たりもしたよね?何もなかったけど」
「それは俺が今までずっと我慢してたからだっ、今だってずっと我慢してんのっ、お前に嫌われたくないから!」
「……っ」
驚いて口を閉ざしてしまう、みるみるうちに顔に熱が集まるのを感じた。
はぁ~、
岳人の深いため息。
「言わせるなよ、こんなこと、言うつもりもなかったのに」
「だってあんた、結構とっかえひっかえ、色んな人と付き合ったりしてたよね?」
「それは大学での話だ」