あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
「いやいやいやっ、最近でもっ、なんかあったよね?電話も相変わらず良く話してるみたいだし」
「それは客だし、営業も必要なんだよ?、俺だって健全な男だし、ずっと片思いしてもたまるもんはたまるんだからしょうがねぇだろ?」
黙って岳人をじとりと見つめる。
「あのなあ、そういう潔癖さ、止めろってっ、お前が好きでも、お前に手を出す訳にもいかないだろ?エッチだけしても意味ねぇんだから、お前だって色んな奴と付き合っただろ?」
「ちょっと、人をビッチみたいに言わないでよ?」
「ああん?そんなこと言わねぇよ、お前はビッチどころか、隙のない女なんだから、だから自己嫌悪で泣いてたんだろ?」
図星指されて、ぐっと詰まってしまう。
「だから……簡単には手を出さない、お前の方から俺が欲しくならないとダメなんだよ」
あたしの目の前に立つ岳人に、そっと優しく抱きしめられた。
椅子に座ったまま、ふわりとした視界に覆われて、暖かい体温に安心する。
「ねぇ、岳人ってさぁ、あの店は自分の店?経営者って事は社長なの?」
今までそういうこと聞いたことがなかったなと、ふと思ってしまった。
「……あれは親父に与えられた店なんだよ、自分でやってみて、他の店より売り上げが良かったら、自分の店を出してみろっていう……」
「じゃあ、岳人のお父さんは社長さん?他にもお店があるの?」
目を輝かせて岳人を見ると、舌打ちされてしまった。
「カミヤダイニンク、聞いたことくらいあるだろ?国内外に何軒もある飲食業界、ギャバやホストクラブまであるし、ホテルや旅館もある。
親父はその社長だよ」
はぁ~、深いため息をついて、髪をがしがしとかきむしっている。
「もう、いい、俺は寝るぞ」
そういえば、昔から家の話を聞くと嫌がっていたのを思い出す。
さっさと当たり前のように、あたしのベッドに上がり、寝転んで目を閉じた岳人を、
しばらく見つめていた。