あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
いつもの日課で、おばぁちゃんが入院している病院に行く。
そろそろ活けてる花が枯れるだろうから、途中で花屋に寄り、
おばぁちゃんが好きそうな、可愛いお花を買って、病室に向かった。
「おや、咲良?今日は日曜日だろう?毎日来なくても、お前もデートくらいしないのかねぇ」
ベッドに寝た切りのままの、おばぁちゃんがそう言って笑った。
枯れそうな花を取り替えて、おばあちゃんの病室に飾りつけてから、誤魔化すように笑った。
「やだなぁ、おばあちゃん、デートは夜するからいいのよ?」
「そんなこと言って、デートする相手もまだいないんじゃないかい?いつになったら、花嫁姿が見れるのかねぇ?」
「もうすぐ見れる予定なんだから、大丈夫だってば~」
二人で笑い合い、同室の人とも挨拶して話をしてたら、看護師の人に呼ばれてしまった。
「……先生が話があるそうです」
小声で言われて、おばあちゃんに声を掛けてから、看護師さんに着いていく。
医師の先生がいる部屋に案内されて、中に挨拶して入るなり、
淡々とした説明を受ける。
「おばあちゃんの癌ね、若い人と比べて進行は遅いと言ってもね、このままいくと、もって半年ですかね、早くて2ヶ月だと思っておいて下さい、お母さんには私から説明はしてますからね」
「……そうですか」
「お年を召した方だから、手術しても体が持ちませんからね、こちらとしては、痛みを和らげてあげることしか、出来ないので」
「……そうですか」
「抗がん剤とかも、ツラいかと思うので使用しません、使っても意味もないですし、ご本人に苦痛を与えたくありませんので」
「はい……分かります」
おばあちゃんは確かに高齢者だし、いつ死んでも、おかしくはない。
さっき見た時に確かに感じたのは、痩せてやつれたということ。
全体的に小さくなっていた。
もともと小柄な人だけど。
それからのお医者様の話は頭に入らなくて、おばあちゃんの顔を見てから、病院を出た。
今日は友達の家に泊まりに行こうとしてたから、荷物を抱えて、途中で公園に寄り、
ブランコに座っていた。
……おばあちゃんが死んでしまう。
覚悟はしてたのに、嫌だ、嫌だ、嫌だ……。
俯いて一人で涙を流していたら、足元に見覚えのある靴があった。