あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
いらっとした瞬間、洋子が顔を上げて、真面目な顔で口を開いた。
「あのね、咲良、色々あってあたし達……結婚することになっちゃった、実はお腹にその…赤ちゃんができちゃってね、妊娠しちゃったみたいなんだ~」
照れたように笑う洋子を見て、あたしは驚いて、飲んでたビールを噴き出しそうになった。
「えぇっ!?妊娠…って、巽の~っ?」
二人を見比べて、思わず大声を出してしまう。
大学時代、あたしは最初に巽に告白されて、優しそうな人だし、イケメンだしと、深く考えずにお付き合いしてたんだけど。
些細な理由で喧嘩して、すぐに別れて、別れた後もなんとなく、友人という関係のまま、
岳人と洋子と一緒に、良く飲み会をするようになった。
二人が付き合いはじめたのは、大学卒業してから、
会社での接待で、偶然出会ったのがきっかけだったと聞いたけど。
洋子にしては珍しく、長続きしているなと思ってたけどね。
「……失礼ねぇ、巽以外となんかある訳ないし、大学時代は色々あったけど、今は落ち着いて、真面目にしてるんだから」
拗ねたように口を尖らせる洋子、それを優しい視線で見つめる巽。
そっか、なるべくして、なったんだ……。
「やだ、びっくりしちゃって、ごめんね、おめでとう二人ともっ」
巽とは軽い気持ちでお付き合いしてただけだから、心からの祝福が言える。
巽の生ビールも来て、改めて、三人で乾杯した。
「咲良と岳人には、一番に報告しようと思って、結婚を決めたのも急だし、結婚式も早めに済ませてしまおうと思ってさ、驚かせてごめん」
真摯な態度で頭を下げる巽、洋子にはもったいないくらいのいい人だ。
「……全くだな、お陰で俺は忙しいんだよ!おめでとう二人とも、少しくらい飲ませろ」
生ビールを持った岳人が会話に加わり、みんなで揃ってまた、乾杯する。
「……でも不思議な感じよね?咲良と巽が付き合ってたなんて、今だったら考えられないもの」
「どっちにしても続かねぇだろうな?」
岳人の言葉にムッとしてしまう。
「だいたい咲良はいっつも長続きしないしね、深く考えずにお付き合いなんかするからさ」
洋子に色々暴露されそうな雰囲気になり、慌てて遮る。
「やだなぁ、あたしをネタにするのはやめてよね?洋子だって結構モテたじゃない?」