あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
「そうねぇ、あの頃あたし、いわゆるビッチだったからさぁ、巽ともあったけど、岳人も一回だけ寝たことあったわよね?」
笑いながら洋子が言って、巽が慌てたように洋子を肘でつついた。
「もうビールを飲むのは、やめた方がいい、お腹の子供にも良くないだろ?」
「あら、そうだったわ、今ので最後のアルコールね、暫く飲めないなんて、つまんないわぁ」
二人の会話をどこか、遠くで聞いていた。
今……なんて言ってた?
巽ともあったけど、岳人も一回だけ寝た……?
寝たって、みんなで飲み会して、雑魚寝みたいに、ただ寝ただけじゃなくて……?
つまりは……そういうこと?
口を閉ざしてしまったあたしを見て、岳人が厨房からピザを持って来た。
「お前、腹が減ったら元気なくなるからな、色々持って来るから、しっかり食べとけ」
なにごともなかったように、会話は弾む。
……昔の話だし、みんなもう大人だし、お祝いの場で水をさすような真似はしたくない。
そう思ったあたしは、ポーカーフェイスを装い、普通の友人として振る舞った。
体に障るからと、巽はほろ酔いの洋子を連れて帰ることになり、
あたしも家に帰ることにする。
「待てよ、家まで送るから、ちょっとだけ待ってろよ?」
忙しそうな岳人を待たずに、店を出た。