あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
あたし……ショックを受けてるの?
そんな筈ない、あたしはただ、みんなとはただの友人として付き合っていただけ。
じゃあ、このモヤモヤは何なんだろう?
……友人として付き合っていたのは、あたしだけなんじゃないんだろうか?
そう思ったからショックなんだ……。
巽は洋子が好きで、洋子も巽が好きで、岳人は……あたしが好きだと言っていた。
なんにもなかったのは、あたしだけで……。
荷物を抱えて、住み慣れたアパートに結局帰ってしまう。
二階のドアの前に立つ人影を見て、
……息を飲んだ。
「日野くん……」
そこにいたのは、会社の後輩である日野くん、哲……だったんだ。
あの夜のことを思い出して、青ざめてしまう。
「どうして家に……?ああ、今日は休日だったから、仕事でトラブルでもあった?……悪いけどあたし、今日は色々あったから、明日会社で聞くから、ごめんね」
努めて冷静を装い、逃げるように、そそくさとアパートの鍵を開ける。
「……ごめん、咲良さん、こないだの夜は俺、舞い上がって、どうかしていた。お酒も飲んだから、あなたに酷いことしたかもしれない」
ドアを開けて、部屋の中に急いで入り、すぐに内側から閉めようとして、
日野くんがそのドアを閉ざさないように、手で力強く掴んだ。
「……覚えてないの?」
「ちゃんと覚えている。……自分が何をしたのかも」
「じゃあ……、分かるよね?会社では普通に接するから、今は……ごめん」
そう言って、ドアを閉めようとして、力では敵わないから、取り敢えず荷物を置く。
「待って下さい、咲良さん、俺達、体の相性はいいと思います、咲良さんは……嫌だったんですか?」
不安そうな顔で、じっと真っ直ぐに見つめられる。
すがるような視線に戸惑い、胸が痛んだ。
「嫌じゃなかったけど、でも、意識がない時もあったから……」
「そうですよね、あなたが良すぎて、止まらなかったから、本当にごめん」
「……そんな話、玄関先でしないで……っ」