あたしの好きな人
第2章 魅力的な友人
うっとりするような、綺麗な笑顔にドキリと胸が高鳴った。
「そりゃあ、もちろん、朝まで抱き倒す。明日は有給取って休みだって、知ってるんですからね?その為に俺は今日仕事して、変わりに明日有給を取って来たんですから」
「そんなの……困るっ」
冗談じゃない、あんなことが朝までだなんて、体が持つわけないし、死んでしまう。
ぞくりと青ざめて、やっぱり警察を呼んで追い出してしまおうと、ポケットから携帯を取り出した。
「咲良さん……、お願いだから俺のモノになって?
あなたがハイスペックな男性しか興味ないのも知っています。
ちなみに俺の実家は北海道で専業農家をやってます、土地も沢山持ってますし、大きな牛乳工場もありますし、俺が住んでるマンションは、自分で購入したモノです」
意外にお金持ちだと聞いて、ピクリと反応してしまう。
なるほど、だから彼は身長も高いし、意外と筋肉質なんだな。
農家の手伝いをして、牛乳を飲んで、大自然の中で育ったから、
彼の人格が形成された訳だ。
「俺のマンションに今度見に来て下さい」
「うん、見たい」
素直に頷いてしまい、嬉しそうな笑顔に、心がほんのり、暖かくなった。
ああ、今日は色々あったから……。
小さくなって、やつれてしまったおばあちゃん。
あたしが好きだという、岳人。
結婚するという、洋子と巽。
大学時代に巽とも岳人とも、寝たという、洋子。
何もかも忘れてしまいたい。
忘れさせて欲しい。
日野くんの胸に飛び込むのは、まだ少し恐いけど。
あたしのことを潔癖だと言った岳人の顔が、一瞬過る。
いらっとした気分になり、あたしは日野くんに飛び込むように抱き付いたんだ。
「……咲良さん」
日野くんの嬉しそうな声が耳元で聞こえて、優しく背中に手が回された。
「……今日は色々あったから、正直、頭の中がごちゃごちゃしてるけど、忘れさせて欲しいの」
抱きしめ合って、顔を上げて、日野くんの顔を見上げて思い切って言う。
「……っ、その顔、反則です。咲良さん、今日は優しくじっくり時間をかけて、愛すから……ベッドルームに行きましょう」
フワリと視界が回って、お姫様抱っこをされて、あたしの部屋のベッドに連れて行かれる。