あたしの好きな人
第3章 友人が本気になったら
「おばぁちゃん、今日は果物持って来たから、一緒に食べよう」
おばあちゃんのいる病室に入り、いつものように、同じ部屋の人達にも挨拶をした。
「あら、咲良、今日は気分がいいんだよ。昨日はあんたの彼氏に会ったよ、いい男じゃないかい?」
上機嫌のおばあちゃんに、リンゴを剥いてあげながら、首を傾げた。
「背が高くてスラッとした男の人でしたよ?咲良ちゃんを心配して探して来たみたいでしたね?」
同じ部屋のオバチャンがそう言って笑った。
「見た目は派手だけど、このあたしにもきちんと挨拶までしてねぇ、どんな関係なのか聞いたんだよ、そうしたら、いずれは結婚するつもりですだなんて、きっちり頭を下げてねぇ、安心して下さい、俺がついてますだなんて言われてねぇ」
珍しくおばあちゃんがペラペラ話して、その小さな瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
……岳人だ。
昨日おばあちゃんのいる病院に、あたしを探しに行ったって言ってたから。
荷物を纏めて、洋子のいる家に行くつもり、だったから、
心配してここまで来てくれたんだ。
「……いずれは結婚するつもりですだなんて……、そんなこと、言ってたの!?」
「あらやだねぇ、あんたはまだ言われてなかったのかい?」
「しっかりあたしらは、聞いたんだけどねぇ?」
おばあちゃんがあばちゃん達と一緒になって、明るく笑っている。
最近元気がなかったから、本当のことじゃなくても、こんなに喜んでくれるのなら、
敢えて否定するつもりもない。
「やだねぇ、咲良ったら照れちゃって、ちゃんとあの子を大事にするんだよ、あばちゃんはあの子なら大丈夫だと安心しちゃったよ、こんなに嬉しいことはないねぇ」
「……ちょっと他に岳人とどんな話したのよ?そんなに長い時間いたの?」
「まぁ、岳人くんて言うんだねぇ?呼び捨てなのかい?」
おばあちゃんたら、はしゃいでしまっている。
同室のオバチャン達も、岳人の話題でもちきりだ。
「咲良ちゃんとは大学時代からの付き合いなんだってね?」
友人としてだけどね。
「長いことずっと好きだっただなんて、羨ましいわぁ、しかも男前で、お似合いよね~」
……岳人ってば、そんな事までっ。