テキストサイズ

あたしの好きな人

第3章 友人が本気になったら




さっと空気が変わるように、岳人の瞳の中に悲しみの光が灯り、胸が痛くなった。

少し俯いた岳人が、意を決したように、再び顔を上げた。

その瞳には熱い光が瞬いて、鋭く光り、あたしの目の前に近付いた。

「……ンンッ!」

……気が付いたら、あたしは岳人にキスされていた。

都会のド真ん中で、人通りも多く、さっきから通りすぎる人からじろじろ見られてたのに。

肩を引き寄せられて、頬を掴まれて傾けられている。

軽く触れるキスじゃない。

気持ちを訴えるような激しいキス。

にゅるりとした舌が絡められて、優しくなぞられて吸われて、

勝手に甘い声が上がり、堪えきれずに、しゃがみこんでしまった。

呆然として顔を上げると、岳人は何もなかったかのように、ホテルに向かって歩いていた。

その後ろ姿をあたしはただ、泣きながら見ていたんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ