あたしの好きな人
第4章 離れて気付く思い
食事を終えて、ホテルマンに岳人が何やら耳打ちして、チャペルへと案内された。
真っ白で統一されたチャペルを見て、息を飲み込んだ。
全体的にガラス張りで、外からの光りがチャペルを神々しく照らし、椅子も真っ白、壁も真っ白だ。
「凄い……」
ほうっと感嘆の溜め息を洩らして、うっとりと景色を眺める。
……いつの間にか岳人がいなくて、ムッとしてしまった。
どうせまた、仕事の打ち合わせなんだろう。
忙しいんだろうな……。
チャペルの祭壇に立ち、暫く外の光りを浴びる。
神々しい光りの中で、自問自答する。
あたしの……好きな人は……。
大きなドアが開いて、岳人が現れた。
両手いっぱいの、赤い薔薇の花束を抱えて、あたしの元へゆっくり近付く。
「……えっ?どうしたのそれ?」
動揺してそう聞くのに、岳人は真剣な面持ちで、教壇に立つあたしの足元に、
芝居かかった仕草で片膝を立てて、膝まずく。
真摯な瞳であたしをじっと見つめて、抱えきれない程の、薔薇の花束を差し出した。
「……咲良。お前しか考えられない、俺と結婚してくれ、絶対に幸せにするから。……愛しているんだ」
「……あっ、愛して……っ!?」
「好きだとか、俺の気持ちはそんな軽いもんじゃねぇんだよ、いいから四の五の言わずに、いい加減俺にしろよ!」
「……!」
震える手で薔薇の花束を受け取り、ずしりとした重みに驚いた。
薔薇の花束ごとあたしを抱きしめようとした岳人が、邪魔だと感じたのか、薔薇の花束をぺいとどける。
ゆっくり立ち上がる岳人が、あたしと目線を合わせてじっと見つめられた。
ズボンのポケットを探り、指輪を取り出して、左手の薬指にするりとつけられた。
……高そうな、婚約指輪だ。
呆然とするあたしの前で、結婚式の儀式のように、そっと唇が重なった。