あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
哲がいたから笑っていられた。
仕事のことでも、助けられることが多かったから。
寂しさを埋めるように、哲を受け入れたから……。
いまさら急に拒むのもおかしい?
「……せめてここにいる間は、俺と一緒に過ごさせてよ?」
お願い……。
すがるような瞳で、可愛い顔でじっと見つめられると、断れない。
いつものように、受け入れてしまうんだ。
後ろから抱きしめられたまま、服をごそごそと脱がされて、背中にキスの嵐を受ける。
「……咲良、……咲良、……咲良、会いたかった……」
何度もキスをされて、あたしの胸を揉む哲の手が、震えているのに、気付いた。
ほんの少し離れていただけなのに……。
「……不安だったんだ、セフレでも何でもいいから、咲良の傍に居させて?一緒にいられないなんて、考えられない、したくないのなら、しないから……」
キシリ、
ベッドが軋み、哲があたしの体の真上に移動する。
膝を立て、体重はかからないようにして、震える手があたしの頬を撫でる。
何度も何度も。
優しく体温を確認するように、じっと見つめられて、すがるように不安に揺れる瞳が、潤んでいるのに気付いて、ハッとした。
胸が突かれたように、苦しくなる。
「あたしは、哲の傍にいるよ?」
安心させるように言って、その手をそっと包み込むように握りしめた。
「……咲良は俺を置いていかない?」
「うん、大丈夫だよ?」
「良かった~」
安心するように、ほっとした表情で笑う哲の表情が、なんだか危うくて一瞬ぞくりとした。
眠くなったのか、とろんとした目になって、あたしの隣に転がるように寝転ぶ。
「……俺の母親はね、都会で産まれ育った人らしく、北海道の暮らしがつらくて、ある朝突然、逃げ出しちゃったんだ……」
目を閉じて歌うような声で、寝物語を聞かせるように、哲が呟く。
「……うん?」
「……家から出て行く日、どうしてだか朝早くに目を覚ましちゃって……母親にどこに行くのって聞いたんだ、僕も行きたいって言ったのに……」
「……っ」
「……連れて行けないって、哲はずっとここに居なさいって……、だから俺は早く大人になって、都会で暮らしたいと思い続けて、母親を探して……俺を捨てた、あの女を……」