あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
岳人side
咲良が大阪に戻ったとメールで確認して、俺は仕事で何店舗かチェーン店を回った。
カミヤグループの本社に顔を出して、ちゃんと社長代行としての業務を終了させ、
住み慣れた自分の店であるバーに顔を出した。
「オーナー、お疲れ様です」
新婚旅行に巽が行き、チーフ不在になり、俺の代わりに店長にした幸人からの報告を聞く。
幸人は大学生の頃からのバイトで、ずっと俺に付いて来てくれた、可愛い従業員。
イタリアに留学させて、カミヤグループの社員として働いて貰っている。
「暫く大阪に行くつもりだから、店のこと頼むな?」
幸人はやっぱりというように苦笑いした。
「やっぱり大阪ですか?あのホテルを買い占めたって聞いて、嫌な予感したんですよね?咲良さんの為にそこまでするなんて、流石です」
尊敬してるような口調な癖に、その表情はどこか呆れている。
「うるせえよ、ついでにあのホテルの業績を伸ばしてやるんだからよ?カミヤグループとしてもプラスになるだろ?」
「はい、そうですね?ホストクラブの方は大丈夫ですかね?」
「あそこは樹(いつき)がいるからいいだろ?俺はもうあそこは行きたくないの」
「でもオーナーに会いたい客は沢山いるみたいですよ?」
「いいんだって!」
自分で店を出す。
まずはこの店、次いでホストクラブ、キャバクラ、居酒屋。
そこまで順調に行き、収入も安定して、カミヤグループと独立しようとした矢先に、
まさかの親父の失踪。
カミヤグループ丸投げという暴挙に出た。
結局独立出来ず、後継者としてカミヤグループの身内に操られ、訳の分からん会議に出されて、
せっかくだから咲良のいるホテルを調べると、飲食店が微妙な業績だったから、
ついつい買い占めた。
俺のカミヤグループ社長としての、初めての仕事。
これで咲良の傍に居られる、理由ができた。
「じゃあ、せめて、うちのカウンターにいる住人に何か一言お願いしますよ、特に綾乃さんは頼みます」
幸人に頼まれて、しょうがなしにカウンターに行く。
大昔からの常連である、綾乃の傍に行く。
綾乃は金持ちのお嬢様、年はやっと20歳くらいで、可愛い見た目で服はゴスロリだ。
大学生らしく、何故だか俺の父親と、綾乃の父親が友人同士、勝手に婚約者だと言っている、困った奴だ。